若尾文子の映画「やっちゃ場の女」(1962) ジャンパーに長靴姿もまた良し
観たかった若尾文子さん主演映画「やっちゃ場の女」(1962)がついに初DVD化され先月(2017年12月)発売された。ようやく観た“やっちゃ場”の若尾さんはジャンパーに長靴姿であってもやはり美しかった。ただ、続編的作品なのかひと月前に(2017年11月)にDVDが発売された「東京おにぎり娘」(1961)と設定が似ている。つまり、若尾さんがチャキチャキの江戸っ子で男勝りで仕事に奮闘し、恋はちょっぴりほろ苦という点だ。(ライバルが叶順子さんという点もね) もちろん「おにぎり娘」がわりと軽快なのに対し、「やっちゃ場」は若尾さん演じる主人公ゆき子の父親の家出問題などシリアスな問題も含んでいたりと、ストーリー自体は全く違うんですがね。
そんな訳でどうしてもこの二作品を比べて観てしまった結果、「おにぎり娘」の仕上がりがかなり良かっただけに「やっちゃ場」が少々霞んでしまったというのが私の正直な感想だ。なんと言ってもゆき子が保守的なのが良くない。二作が決定的に違う点がそこなのだ。家族のため妹のため、自分のことは後回しでヤセガマンする姿が何とも健気で泣かせると言えばそうなんですが、まだまだ若い娘さんを家業のために縛り付け、おまけに好きな人まで諦めなければならないとなれば何だか気の毒で見ていられない。明るいラストとは裏腹に少々後味が悪いのだ。
とはいえ、花火の夜の浴衣姿や、市場で冷酒をぐいっと飲み干す若尾さんは世にも美しく、妹役の叶順子さんや父親役の信欣三さんは非常に良かった。思うに、これはDVDを発売する順番と言うかタイミングに問題がありそうな気がする。私ならこの二本をひと月ずらして立て続けに発売しようとは思わない。ま、二作とも観られたから言える話しなんですがね。
やっちゃ場の女(1962)
Story
東京青物市場、通称やっちゃ場の老舗果物仲卸店「小田新」の後継ぎ娘ゆき子(若尾文子)は、男勝りのチャキチャキ娘だ。ある日、母くめ(清川玉枝)が突然亡くなり、家出した父(信欣二)を訪ねるも父は家に戻る気がなく、弟(手塚央)と妹(叶順子)を抱え、奉公人の精一(藤巻潤)とふたりで忙しく商売を切り盛りしていた。叔母が持ち出した縁談にも耳を傾けず、密かに精一を思うゆき子だったが、妹の早苗もまた精一を思っていた…。
見どころピックアップ
- 何度観てもこういう粋で勝気でさっぱりした役どころの若尾さんは本当にすばらしい。ジャンパー姿も案外似合ってますし、早苗を迎えに行ったシーンやラストシーンでの顔アップカットには見とれちゃいました。美しすぎます。
- 叶順子さんがまたかわいらしいんですよ。若尾さんが役柄的にどうしても地味な分、叶さんはチャーミングで華やかなファッションを見せてくれるのもいいですね。家にいるときのネグリジェ姿もステキ。
- 父親役の信欣二さんが非常にいい味出してます。「青空娘」でも若尾さんの父親役ですが、「やっちゃ場」の方が断然いいですね。身勝手だけどやさしい父親の雰囲気にピッタリです。そういえば母親役の清川玉枝さんや早苗の同僚役で登場する穂高のり子さんも「青空娘」に出演してますね。穂高さんはスラッとスタイルが良くステキな女優さんです。
- 弟の一郎がとても良いキャラクターで良かったですね。それから精ちゃんと同じ奉公人の三ちゃんもいつも何かつまみ食いしていたり、お箸でどんぶりを叩いたりと愛すべきナイスキャラクターでおもしろかったです。
出演■若尾文子(小田ゆき子)
藤巻潤(井上精一)
叶順子(小田早苗)
信欣二(小田源造)
手塚央(小田一郎)
村田(宇津井健)
伊達(根上淳)
監督■木村恵吾
脚本■田口耕
1962年6月17日公開 91分 カラー
※レンタルに取り扱いのない作品です。(TUTAYA DISCAS調べ)
それではまた。