若尾文子の映画「妻二人」(1967)美人×美人のミステリとなれば観ないわけにいかない
こんばんは。
今夜は「妻二人」(1967)について書きたいと思います。
原作は1955年に発表されたパトリック・クェンティンのミステリ小説「ふたりの妻を持つ男」。
これを脚本家で映画監督でもある新藤兼人が脚色し増村保造が監督した作品で、若尾文子と岡田茉莉子の二大美人女優が「ふたりの妻」を演じます。
岡田茉莉子は、1951年のデビュー以来東宝や松竹の看板女優として活躍し、1965年にフリーとなった後は大映作品にも何作か出演しておりますが、若尾さんとの共演は本作と「不信のとき」(1968)だけではないでしょうか。
ともあれ美人×美人でお届けするミステリとなれば、観ない訳にはいきません。
さっそく作品情報を確かめてみましょう。
あらすじ・作品情報
小説家を目指した学生時代の恋人だった順子(岡田茉莉子)と、バーで偶然再会した健三(高橋幸治)は、順子が昔の自分のような小説家を目指す小林(伊藤孝雄)に暴力を受けながらも尽くしている事を知る。そんな健三は、順子の紹介で小説を持ち込んだ出版社で、社長の娘、道子(若尾文子)に気に入られ社員となり、順子を捨て道子と結婚した過去があった。ある日健三の勤め先まで押しかけてきた小林は、偶然居合わせた道子の妹、利恵(江波杏子)に近づき、結婚話までこぎ付ける。小林が金目当てだと感づいた道子と健三は結婚を反対するが、すでに小林は社長である父のスキャンダルを掴んでおり、それをネタに道子をゆすり金を要求してくる。一方、小林に捨てられ行き場をなくした順子は、健三の元へ借金を申し込みに来るが、その晩小林が殺され、順子は容疑者として捕まってしまうのだった。
出演■若尾文子(道子)
岡田茉莉子(順子)
高橋幸治(健三)
江波杏子(利恵)
伊藤孝雄(小林)
原作■パトリック・クェンティン
監督■増村保造
脚本■新藤兼人
1967年4月15日公開 93分
感想・レビュー
★★★☆☆ 3
オープニングはカッコ良く良い感じの滑り出しなんですが、どういう訳か途中からミステリと言うよりメロドラマにしか感じられなくなってしまいます。おそらく若尾さん演じる道子の生真面目でしっかりモノというキャラクターと、その真逆の順子のキャラクターの対比を意識するあまり、どちらも大げさで不自然なキャラクターになっているからではないでしょうか。もっと言えばこの映画に出てくる全登場人物がどうも大げさに設定されすぎているのかも知れません。増村監督特有の台詞の言い回しにも少し問題がありそうです。ただ、個人的にはこの感じ、嫌いじゃないです。ベタな話しって結局はおもしろいんですよ。
見どころピックアップ
- いちばんに言いたいのはやはり若尾さんと岡田茉莉子さんの着物姿の美しさでしょうか。アップにした髪もとてもきれいです。これをスクリーンで見せたいがために撮った映画なのかとすら思えてきます。あながち間違いでもなかったりして。
- 道子と健三のマンションや、井上夫婦のマンションが60年代後半らしく素敵なんですよね。道子の家のすりガラスのはまった玄関も素敵ですし、井上家のような段差のある部屋ってすごく良いと思うのですが、何もかもが「実用性」を重視する世の中になってしまい寂しいものです。
- 江波杏子さんにお嬢様役は似合わないように思いましたがどうでしょう。しかし、あの何とも言えない独特の毒のある雰囲気、良い。
- 若尾さんの「抱いて」はコントにすら思えてきましたが、それはそれで良かったですね。ネグリジェ姿も安定の美しさ。
- 殺人シーンは迫力があって素晴らしいです。タイミングも良く結構驚かされました。
ひとりごと
妻を岡田茉莉子さん、昔の恋人を若尾さんとキャストをひっくり返した方がおもしろくなりそうに思うのは、私が若尾さんのファンだからでしょうか。正しいを連発するロボットのような道子の役は、正直若尾さんの魅力が出にくい役どころかと思いました。
おそらく増村監督は、敢えてそのキャスティングとこの棒読み(失礼)の台詞回しを指示しているのだと思いますが、あまりにアンドロイド若尾すぎてちょっと寂しい作品ではありました。
それから、「妻二人」というタイトルほどそうでもないわりにこのタイトルという事は、結局健三が愛していたのは順子ということなのかも知れないですね。そんなの当たり前と思った方、ごめんなさい。
それではまた。
おやすみなさい。