「ガラスの鍵」(1942) どこまでもクールなアラン・ラッドとヴェロニカ・レイク
今夜はアラン・ラッドとヴェロニカ・レイクの「ガラスの鍵」(1942)を観ました。
ふたりの共演で大ヒットした『拳銃貸します』(1942)を観て以来、すっかりフィルム・ノワールが好きになってしまった私としては、この組み合わせというだけで心躍ります。
おまけにこの映画は、『マルタの鷹』のダシール・ハメットによる同名小説が原作ということで、ワクワクしながら観ましたが、アラン・ラッドもヴェロニカ・レイクも『拳銃貸します』の雰囲気そのままに、クールな役どころがぴったりハマってなかなかの秀作でした。
ガラスの鍵(1942)
話しは政治がらみの犯罪モノで、アラン・ラッド演じるエドのボスである議員のポール(ブライアン・ドンレヴィ)と、敵対する暴力組織のボス、ニック(ジョセフ・カレイア)との争いがメインです。政治的失脚を巡る駆け引きにとどまらず、時に監禁リンチという荒っぽいヤクザな世界が描かれていたりもしますが、エドの、身体でなく頭を使って窮地を切り抜けるというクールなキャラクターときれいな顔によって、血なまぐささも男くささも中和され、実にバランス良い仕上がりとなっていました。
『拳銃貸します』でのヨレヨレのトレンチコートから、いくらかきれいになったダブルのスーツ姿もキマッて相変わらずステキなラッド。
それから、荒っぽいが悪いやつじゃないというポールのキャラクターや、兄弟の盃を決して裏切らないエドの忠誠心が、どこか昭和の任侠映画を思わせるのも良いです。敵に対する非情さと、身内に見せる人情が観るものの心をグッと掴んで離しません。
そしてポールが一目惚れするヘンリー上院議員の娘ジャネットとして登場するのがヴェロニカ・レイクです。
彼女がまた良いです。ほっそりした身体としなやかな動き、つるんとしたきれいな顔が何ともチャーミングな上、今回はちょいとワルな笑顔も見せ、ミステリアスさも加わってなおさらステキなんです。
ふたりは初めて会った時からお互い惹かれあうのですが、この出会いのシーンがなかなか良いんです。いかにもたった今恋におちたという感じの二人のうれし恥ずかし気な目線!見ているこっちまで何だか照れくさくなってきます。ところが(バレバレなのに)エドはポールへの忠誠心から彼女にやけにそっけなく、思いをひた隠しにするんです。そんなエドに対し、ジャネットのほうは臆する事無く堂々と積極的にアピールするところなんて良いですし、兄殺しの真相を知るため、好きでもないポールと婚約して指輪を受け取ってみたりと、なかなかしたたかで策略的でもあります。それでも結局最後には、やっぱりかわいい女だったというラストシーンもまたヴェロニカ・レイクにぴったりでとても良かったです。
『拳銃貸します』に始まり、もう30本以上のフィルム・ノワール作品を観てましたが、私にとってヴェロニカ・レイクは特別好きな女優さんであることに今回気づかされました。
あとはニックの手先で、酒好きでやたらと暴力的な用心棒、ジェフを演じるウィリアム・ベンディックスがこれまたいいアジ出してるんです。彼の名演があってこそ、アラン・ラッドのクールさがより一層引き立つわけで、まさに名優の名に相応しい俳優さんです。ちなみにウィリアム・ベンディックスはノワール作品においてなかなか重要なキー・パーソンで、ヘンリー・ハサウェイ監督の『闇の曲がり角』や、同じくラッド×レイクの『青い戦慄』(1946)でも二人を押しのけるほどの名脇役ぶりを見せています。
Story
政治家のポールは、右腕のエドと共にニックの暴力組織を押し込めうまく立ち回っていた。
ある日ヘンリー上院議員の息子で賭博狂のテイラーが殺され、何者かによる密告の手紙から、妹とテイラーの交際を良く思っていなかったポールが犯人ではと疑われる。窮地に追い込まれたポールのため、エドはニックのアジトへ乗り込むが、監禁されてしまう。何とか逃げ出し、次の手を撃つべく考えた末、またしてもニックのもとへ向かったエドは、策略的に新聞社社長を追いつめ、ニックの組織を仲間割れさせ、ついに真犯人へと辿り着くのだった。
作品情報
監督■スチュアート・ヘイスラー
原作■ダシール・ハメット『The Glass Key』
出演■アラン・ラッド
ヴェロニカ・レイク
ブライアン・ドンレヴィ
ジョセフ・カレイア
ウィリアム・ベンディックス
1942公開 85分 モノクローム
それではまた。
今回も楽しく拝見しました。
BSプレミアムの映画放送の情報もありがたいです。
来年は私もフィルム・ノワールをもっと観ていこうと思ってます。
monk さま
うれしいコメントいただきありがとうございます!
フィルム・ノワールはまだまだ作品数がたくさんあるので、私も引き続き観ていきたいと思ってます。
おすすめがありましたらまた教えて下さい~!