スローなブギにしてくれ

 

こんばんは。

今夜のひとり映画は「スローなブギにしてくれ」(1981)です。

この映画は、片岡義男の同名の短編小説を原作に映画化した作品ですが、脚本は「スローなブギにしてくれ」をベースに、同じく片岡作品の「ひどい雨が降ってきた」「俺を起こして、さよならと言った」の3作品を織り交ぜたものとなっております。

監督は、日活ロマンポルノや野良猫ロックシリーズなど、主に若者映画で監督を務めた藤田敏八監督。藤田監督と言えば、俳優としても多くの映画に出演し、鈴木清順監督の「ツィゴイネルワイゼン」(1980)では、日本アカデミー賞助演男優賞を受賞しております。以前書いた「タンポポ」にも歯の痛い男役で出演しております。

そしてこの映画と言えば、そうですあの曲。南佳孝の歌う主題歌「スローなブギにしてくれ」です。例の「Want  you」が強烈なこの名曲は、はっぴいえんどのドラマーで作詞家の松本隆さんが作詞を手がけております。

主演はこの映画が初主演作という浅野温子。意外にも映画での主演作は今のところこの作品だけなんですね。とにかくこの映画の浅野温子はもうめちゃくちゃかわいいです。美しいです。当時二十歳の彼女の眩いお姿にもご注目下さい。

それでは作品情報をどうぞ。

 

 

作品情

夕暮れの第三京浜。

白いムスタングから、仔猫と若い女が放り出された。
後ろから来たオートバイの少年ゴローはその若い女・さち乃を拾い、同棲をはじめる。
さち乃はスナックでアルバイトし、ゴローのアパートには猫がどんどん増えてゆく。
ただでさえ危なっかしい若い二人に、ムスタングの男が絡み、さらには、さち乃が事件に巻き込まれ…。

出演■浅野 温子

古尾谷 雅人

山﨑 努

原作■片岡 義男

監督■藤田 敏八

脚本■内田 栄一

音楽■南 佳孝

1981年3月7日公開 130分

 

 

感想・レビュー

★★★★☆ 4

オープニングでいきなりやられました。夕暮れの第三京浜を走るムスタングとバイク。バックに流れるのは例の名曲、「スローなブギにしてくれ」。良いです。カッコ良すぎです。上映時間が130分と長いですが、さち乃(浅野温子)とムスタングの男(山崎努)、ふたりの物語が交錯しつつ同時に進んでいくスタイルですので、この時間になったのでしょう。必要かどうかはさておき、さち乃の全裸シャワーシーンなどサービスシーンもあり。猫みたいに気まぐれで可愛い女に群がる男たちの愛と欲望の物語。ハードボイルドな世界観に酔いしれて下さい!

出会いと別れ

白いムスタングに乗った男は、ちょっとした言い争いから、猫を連れた若い女、さち乃を車から引きずり降ろし、道端に捨て去っていきます。さち乃と子猫は、偶然後ろから来たバイクの若い男、ゴロー(古尾谷雅人)に拾われ一緒に暮らし始めます。一方、ムスタングの男は、古い米軍ハウスで、輝男(原田芳雄)と敬子(浅野裕子)と男女3人で暮らしていたが、その晩、ランニング中に輝男が心臓発作で急死してしまいます。ムスタングの男は、さち乃に連絡を付け、再会するのですが、その日さち乃を送ったムスタングの男は、若く美しく無防備なさち乃に惹かれ始めます。

謎のおじさん山崎努がとにかくカッコ良いです。ムスタングはもちろん、米軍ハウスのバタ臭さや、ガウンを着てトマトジュースを飲む生活スタイルなど、アメリカかぶれで気取ってはみたものの、人生にくたびれた中年男を熱演しています。出演が少ないですが、やはり原田芳雄さんもかっこいいですね。そして車で送ってもらう時、居眠りしちゃうさち乃がかわいすぎです。

崩れだす関係

ゴローがバイト先をクビになり、さち乃がスナック「クイーンエリザベス」で働き始めます。男を虜にしてしまうさち乃に腹を立てたゴローは、浮気したりさち乃に暴言を吐いたり、荒れて家に帰らなくなります。傷ついたさち乃は、ムスタングの男に誘われるまま旅に出ます。「俺と心中しないか」と言った男に惹かれ始めたさち乃は、男と関係を持つのですが、その旅が男の娘のピアノの発表会のためだったと知り、呆れて仕方なくゴローのアパートに戻ります。

なぜゴローがここまでひどい事をさち乃に言うのか理解不能ですが、若い男の身勝手さや独占欲は大いに伝わってきます。それから弱い中年男の欲望としょうもなさ。女性目線で言えば、とにかくさち乃の男運の無さに泣きたくなりますが、男性からすると、この男たちの気持ち、痛いほどわかるのではないでしょうかね。いい女がいたら何としてでもモノにしたいのは男性なら当たり前なんですよね。多分。

事件と完全崩壊

ゴローと気まずいままスナックでやさぐれて働くさち乃が、仕事帰りに道草していると、ある事件が起こります。ゴローは仕返しをすべく、犯人を探し回るのですが、そんなゴローに愛想が尽きたさち乃は、再びムスタングの男の元へ行き、男の家で敬子たちと暮らすことになります。しかし、結局さち乃はそこでも馴染めず男の家を出て姿をくらまします。ムスタングの男と敬子たちの関係は崩壊し、必死でさち乃を探す男とゴローでしたが、再びある事件に巻き込まれ…。

このあたりは観ていて少々ツライです。男性と女性では、見え方の違うシーンかと思いますが、愛とは何ぞやと考えさせられてしまいますね。

 

 

ひとりごと

この映画は感想を書くのが非常に難しい映画でしたね。

基本的には、猫みたいに気まぐれな女というモチーフがあり、そこに群がり振り回される男たちの物語なんでしょうが、女の私からすると、正直男のエゴと欲望が目に付く作品でもありました。

ただ、最終的には「ガキにはガキがお似合いだ」と言った男の言葉通り、若い二人は「愛」という名のもと、お互いを許しあい、平凡で退屈な大人になってゆき、逆にムスタングの男はいつまでも成長できないまま年だけとってしまうわけなんですね。

若者たちの成長の物語ととるか、いつまでも成長しない大人の悲哀を描いた物語ととるか、考えれば考えるほどわからなくなりますが、ただ、藤田監督自身は4度も結婚され、どちらかと言えばムスタングの男タイプだったのではないかと推測されますので、だとすれば、こんなおじさんで何が悪い的な開き直りとも取れなくもないですし、何とも難しいですね。

しかし、何はともあれ、この映画の山崎努は最高にカッコ良いではないですか。こんなおじさんいたっていいんです。ただ、人を巻き込むのはダメですけどね。

室田日出男をはじめ、原田芳雄、伊丹十三、石橋蓮司、岸辺一徳、鈴木ヒロミツなど、層々たる俳優陣と、藤田監督の元妻、赤座美代子の出演シーンもお見逃しなく。何だか仲間内でわいわい作った感があって、いいですよね。いい時代だったということでしょうね。

もしかすると、この最高のテーマ曲こそ、この映画の全てかもしれません。

それではまた。

おやすみなさい。

 

 

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