スローガン
こんばんは。
今夜おすすめする古い映画は「スローガン」(1969年フランス)です。
この映画は何と言っても、セルジュ・ゲンズブールとジェーン・バーキンの初共演作にして、ふたりの出会いのきっかけとなった記念すべき作品となっております。
この映画以降1970年代には、ご存知の通り、時代のアイコンとなったお二人ですが、映画でも「ガラスの墓標」(1970)や「ヴェルベットの森」(1973)などの作品で次々と共演を果たし、1976年には例の問題作、「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ」でジェーン・バーキンを主演にゲンズブールが初監督を務めることになる訳です。
そして監督は、フランソワ・トリュフォーやミシェル・ルグランなど、ヌーヴェル・ヴァーグの関係者と共に、4作の作品を制作し監督を務めた、ピエール・グランブラ。
ゲンズブールの音楽をフィーチャーしたこの「スローガン」は、ピエール・グランブラ監督の代表作であり、監督自ら出資して撮った作品なんだそう。
それでは簡単に作品情報をどうぞ。
作品情報
ベネチアCM映画祭でグランプリを受賞したCM作家のフランス人セルジュ(セルジュ・ゲンズブール)は、恋人とバカンスに来ていたロンドンの娘エヴリン(ジェーン・バーキン)に一目惚れをする。エヴリンもまたセルジュに惹かれ、二人はパリで暮らし始めるが…。
「Oricon」データベースより
出演■セルジュ・ゲンズブール
ジェーン・バーキン
ジュリエット・ベルト
アンドレシア・パリシー
アンリ=ジャック・ユエ
1969年公開(フランス) 93分
感想・レビュー
★★★★☆ 4
観ているだけでドキドキするほど、恋に落ちてゆくセルジュ(セルジュ・ゲンズブール)とエヴリン(ジェーン・バーキン)の姿がリアルに感じられました。お互いを見つめるふたりのうれしそうな顔が忘れられません。この映画と同じように、ゲンズブールとバーキンも恋に落ちた訳ですから、伝説のカップルが誕生する瞬間を捉えたドキュメンタリーみたいなものですね。若くて美しいジェーン・バーキンはもちろん、ゲンズブールによる劇中音楽もGood。個人的には大好きな映画。
恋に落ちたら
オープニングはセルジュの製作したアフターシェーブローションのCMからスタートします。
セルジュはベニスのCM映画祭でグランプリを獲得し、ホテルへ戻るとエレヴェーターでエヴリンを見かける。その後お互い恋人とバカンスを楽しんでいると、再びふたりがすれ違い、やがて恋に落ちる。
妻子があり仕事も忙しく、なかなか時間のとれないセルジュ。そんなセルジュに不満なエヴリンは、以前の恋人デイヴィットのいるロンドンへ一度は旅立つものの、どうしてもセルジュが忘れられず、ロンドンまで迎えになければ自殺すると、パリへ戻っていたセルジュに電話をかける。
二度見かけるだけで、すぐに恋仲になるふたりですが、説明なんて必要ないほど惹かれあったということでしょう。その後忙しい合間を縫って、少しでもふたりで過ごす時間を楽しむセルジュとエヴリンを描いたシーンがいちばん好きです。エヴリンがセルジュを見送るときの、うれしさと寂しさの交じり合った顔が非常に印象的です。セルジュがカメラのファインダーを覗き込むと、エヴリンの姿が映し出され、セルジュが自分の本心に気づくシーンもいいですよね。
それからふたりのファッションも素敵ですし、セルジュのオフィスやCMスタジオが最高にクールです。さすが1969年。何もかも洒落てます。そして、ゲンズブールの手がけるサウンド・トラックがすばらしいです。
別居、映画への思い
エヴリンを連れ戻しにロンドンへ行き、生まれたばかりの娘と妻フランソワーズ(アンドレシア・パリシー)と別居することになったセルジュは、パリでエヴリンと暮らし始める。はじめは楽しく暮らすふたりだったが、妻は離婚を承諾せず、パーティでは白い目で見られ、エヴリンの不満は募るばかり。一方、CM界では成功を収めたセルジュも、映画を撮る夢のためアイデアを考え、CMの仕事もあって忙しい日々。すれ違い始めたふたりの関係。そんな時二人は再びベニスへ向かうことになる。
パーティで皆にエヴリンを「家庭の破壊者です」と紹介してまわるシーンが印象的でした。なかなか洒落てていいシーンですよね。こんな風にまわりに紹介するだけマシかなと思うのですが、若いエヴリンには耐えられないんですよね。それにしても奥さま素敵すぎ。なぜこんな良き理解者と別れ若い女に走るのか私にはわかりませんが、まぁ、人生にはそういうこともあるのかも知れないですね。
再びベニス
思い出の地、ベニスに向かったふたりだったが、すでにその関係は冷め切っていた。そんな時、運河をモーターボートで無邪気に走り回るふたりの若者と出会い、セルジュたちは観光案内してもらう。お礼にパリへ遊びに来るよう若者に言い残し、ふたりがベニスを後にすると、しばらくしてその若者ダドがパリへ来るのだが、セルジュはCM撮影のため不在だった。
赤いTシャツのハンサムな若者が登場した瞬間、ストーリーは読めてしまうと思いますが、まぁそういうことです。しかし今回観てセルジュの気持ちが痛いほどよくわかりましたね。若さは時に残酷ですね。
ひとりごと
この映画は、ゲンズブールの音楽をフィーチャーした作品と言われている通り、ストーリー性のあるミュージック・ビデオのような映画であり、もっと言えば、ジェーン・バーキンのプロモーション・ビデオのような映画だと思います。
ストーリー云々より、ベニス・パリを舞台に、セルジュ・ゲンズブールとジェーン・バーキンが恋に落ちる。そこが見どころです。ふたりが出会い、恋におちる瞬間が映画になるなんて、ロマンチックだと思いませんか。ゲンズブールとバーキンに魅せられた人にとっては、それだけで宝物のような映画なんです。
個人的にはセルジュの妻フランソワーズを演じたアンドレシア・パリシーにもすごく惹かれました。実はこの方、歌手としてレコードも出されていて、彼女の歌うフレンチ・ボサジャズにちょっとした名盤があるそうですので、今度探してみたいと思います。
それではまた。
おやすみなさい。