ポリー・マグーお前は誰だ?

 

さて今夜の映画は「ポリー・マグーお前は誰だ?」(1966年フランス)を観ようと思います。

1966年。いい時代ですね。

この映画はお洒落映画として有名な作品ですが、残念ながらレンタルには取り扱いがなく、DVDは廃盤となり一時は一万越え!のプレミアがついておりました。

観てみたいと思っていてもなかなか観られなかった方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?

しかし!2017年3月、実に17年ぶりにひっそりとDVDが再発されました!

観たいのに観てない映画のままになっているという方は是非。お早めにどうぞ。

ちなみに私は2000年に発売されたDVDを友人に借りて一度観ておりますが、どんなストーリーだったかは全く記憶にございません。

ただ「良かった」ということ。その記憶だけです。私の思ういい映画とはまさにそういう映画なんですよね。

では作品情報をどうぞ。

 

 

作品情報・あらすじ

1966年のパリ。アメリカ生まれ、パリで活躍するトップモデル、ポリー・マグー。
彼女を追うドキュメンタリー番組「ポリー・マグーお前は誰だ?」をテレビ局が撮影して…
いっぽうパリから遠く離れた寒い国では、後継の王子が、メディアを通して伝わるポリーの姿に一目惚れ。花嫁に迎えようとパリに向かうが…。

 

ポリー・マグーお前は誰だ?[DVD] / 洋画
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監督■ウィリアム・クライン

出演■ドロシー・マクゴヴァン
ジャン・ロシュフォール
音楽■ミシェル・ルグラン

1966年フランス映画

 

 

豪華スタッフに注目

監督のウイリアム・クライン(William Klein)はVOGUE誌などで活躍したファッションフォトグラファー。音楽を担当するのは、フランスのヌーヴェル・ヴァーグ映画の多くの作品の映画音楽を担当したミシェル・ルグラン(Michel Legrand)という豪華スタッフが集結。この布陣でファッション業界を描いた作品を撮るのですから、どうやったってお洒落になっちゃうわけです。

ドロシー・マクゴヴァンの美しさ

主演のドロシー・マクゴヴァン(Dorothy McGowan)はアメリカのモデルで、当時は絶大な人気を誇り多くの雑誌のカヴァーをつとめたそうです。美しい人の美しい時代をフィルムに収めることもまた、すばらしい映画の重要な要素だったりします。ちなみに彼女、空港に押しかけた多くのビートルズファンの中からスカウトされたという話があるのですが、実はそれ、この映画のワンシーンにあるんですよね。なんでもそのシーンを真に受けたある新聞記者が記事を書き、広まってしまったとのことです。そんなドロシー・マクゴヴァンですが、残念ながら映画の出演はこの一本限り。そういった意味でも、この「ポリー・マグーお前は誰だ?」は時代を映す貴重な作品となり、長年人々を魅了し続けています。

ペギー・モフィットの存在感

この映画でもうひとり忘れてはいけないのがペギー・モフィット(Peggy Moffitt)です。

彼女も60年代を代表するファッション・モデルのひとりで、大きな瞳を強調した非常に印象的なメイクは、なんと歌舞伎からインスパイアされたとのことです。そしてもうひとつ特徴的なのがヘアー・スタイルですが、ヴィダル・サスーンによるこの”ファイヴ・ポイント・カット”と呼ばれるマッシュ・ヘアにチャレンジしイメージ・チェンジを図ったことで、一躍人気モデルになったとも言われています。この映画の他にも「Blow-Up」という映画に出演し、どちらの作品も出番は多くないですが、その存在感は凄まじく、印象に残るカットになっています。ルー・ドナルドソンのレコード・ジャケットの中にもペギー・モフィットをモデルにした有名な作品がありますね。とにかく60年代と言えばこの人と言ってもいいほど時代を象徴する存在です。

さて、前置きが長すぎでしたが、久しぶりに観てみたいと思います。楽しみ!

 

 

感想・レビュー

★★★★★ 5

いやぁ。本当に久しぶりに観ましたが、やっぱりすごく良かったです!

ファッション業界を皮肉ったシーンやセリフが満載

まずはじめにコレクションのバックステージのシーンなんですが、着心地の悪いアルミニウム製のドレスを業界ナンバーワンの雑誌編集長が褒めると皆賛同するところなんて、「プラダを着た悪魔」じゃないですけど、ファッション業界のあるあるじゃないでしょうか?

全体を通して、ファッション業界を皮肉っているシーンが多くみられますが、当時パリのファッション業界に物申すなんて有り得なかったと思います。しかし、やはり写真家はファインダー越しに真実を見る事ができるのかも知れないですね。監督であるウィリアム・クラインの鋭い観察力や時代を先読みする才能にはさすがとしか言いようがないです。

ちなみにウィリアム・クライン氏はこの映画によってヴォーグ誌のカメラマンをクビになったそうです。でもこのアルミニウムのドレス、今見ると素敵ですよね。

カメラワークやカット割りがお洒落

どのシーンにも当てはまる事なんですが、カメラアングルやカット割りがとにかくお洒落!なんです。テレビ局で会議をしているシーンなんかは、カメラワークでうまくユーモアを演出しつつもスタイリッシュな映像になっていて、非常に細かいところまで作りこまれています。

テレビディレクターとポリーのシーンに注目

もっとポリーの素顔にせまるべく、テレビディレクターのグレゴワールがポリーのホテルへ心理テストを行いにやってくるシーンがあるのですが、個人的にはこのシーン、いちばん笑えました。

ポリーの天真爛漫な素顔が見えてくるのと同時に、ここでもファッションやテレビ業界を皮肉ったセリフが多く繰り出され、観ていて楽しくもあり、真実をつかれてドキッとなるようなセリフもありました。あとは誰と寝たい?と尋ねるシーンがいいですね。この映画はキューバで非常に人気が高く、オスカーに匹敵する賞を受賞したそうなんですが、それはもしかしたらこのシーンにフィデル・カストロの名が上がることによるものかもしれない、とウィリアム・クライン本人が解説で言っておりました。

ストーリーについて

肝心のストーリーについてですが、この映画については細かく書くのをやめておきます。

正直昔の映画で特にフランス映画となると、ストーリー性が少ないものも多くあるのですが、この映画に関してはお洒落にスタイリッシュにジョークや皮肉を織り交ぜながらも、ストーリーがしっかり進んでいき、最後にちゃんとしたオチまでついておりますので、安心してご覧になってください。

 

 

ひとりごと

 

天才ウィリアム・クライン

さて、10年以上前に観たっきりだった「ポリー・マグーお前は誰だ?」ですけれども、正直かすかな記憶に残っていた「良かった」よりもだいぶ良かったです。と言うかすばらしかったです。

ほんとにウィリアム・クラインのセンスの良さと天才っぷりに改めて気づかされました。参りましたです。

以前フィルムカメラをかじった私ですが、この方の写真も好きで、数少ない海外旅行で出かけたロンドンのテート・モダンで森山大道+ウィリアム・クラインの展示を見てるんですよね。ただ旅行中に貧血と風邪でふらふらになってしまい、しっかり見られなかったのが悔やまれます…。

好きな登場人物とシーン

個人的に好きだったのが、雑誌編集長のマクスウェルですね。というのも、昔私が働いていた小さな洋服店の社長にそっくりで親近感が湧きました。こういうワンマンな方、私は結構嫌いじゃないんですよね。おいおいと思いつつもついて行きたくなります。

それからモデルたちのくだらないおしゃべりのシーンもいいですね。テレビディレクターのグレゴワールやイゴール王子の哀愁漂うシーンもいいですし、王子の公務シーンも笑いました。

エンドロール

最後に見所をひとつ、それはエンドロールのイラストです。

このイラストは、ローラン・トポールというフランスの画家が書いた手書きのエンドロールで、なんと全長4.3mもあるそうなんです。このトポールという画家についてウィリアム・クラインは「本物の天才」と言っておりました。確かにすばらしいエンドロールですので是非最後までご覧になって下さい。一緒に流れるエンディング曲もいいですね。さすがルグランです。

あともうひとつだけ、これも監督よる解説で、この映画にデルフィーヌ・セイリグの出演シーンがあるようなんですが、どこに出ていたのか見つけられませんでした。知っている方がいらっしゃいましたら教えてください。

DVD特典映像の監督による解説もおもしろいのでお時間のある方は是非。

それではまた。おやすみなさい。

 

 

 

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