映画「OSS117」ボンド以前にプレイボーイなスパイがフランスに存在した!
ちょっと前に映画秘宝別冊の「危機一髪スパイ映画読本」という本を古本で見つけて読んでいるのですが、これがまぁおもしろい。基本的には言わずと知れたスパイ映画の代表作「007」を中心とした内容ですが、「007」人気に乗って1960年代に製作された60年代スパイ映画も多く紹介されていて見ているだけでワクワクしてくるんですよね。ただその殆どがDVD未発売で手軽に観ることができないのが残念なところ。今回ご紹介する「OSS117」シリーズも残念ながらオリジナル版はDVD未発売の幻のスパイ映画なのですが、2006年に製作されたパロディ版はDVD化されレンタルにもあり。もちろん早速観てみましたが、まずはオリジナル版の「OSS117」シリーズについて説明させて下さい。
OSS117(1957-1970/仏)
映画「007」より早くプレイボーイなスパイが活躍する映画がフランスに存在した!コードネームは「007」ならぬ「OSS117」。フランスのジェームズ・ボンドことユベニール・ボスニール・ド・ラ・バスが活躍する映画「OSS117」シリーズ!
「OSS117」全シリーズポスター 出典 /Tumblr
「OSS117」の一作目「OSSと呼ばれる男」の公開が1957年。「007」の一作目「ドクター・ノオ」が1962年ですので5年も早くボンド的プレイボーイスパイ映画はフランスで誕生していたそうです。ジャン・ブリュースによる原作も1949年の発表で、イアン・フレミングのボンド小説第一作「カジノ・ロワイヤル」の1953年より早いので間違いなさそう。ちなみにこのジャン・ブリュースの小説はフランスで非常に人気が高く、彼をモデルにジャン=ポール・ベルモンド主演で映画まで製作されたそうです。(おかしなおかしな大冒険/1974仏伊)
ストーリーやユベールのキャラクターについては観たことないのでわかりませんが、スパイ映画読本によれば、ユベールはアメリカはルイジアナ州出身のフランス系アメリカ人(!)でなんとフランスではなくアメリカのスパイなんだそう。
ボンドとの違いは秘密兵器をほぼ使用せず柔道や合気道で格闘するという点と、自ら女性をナンパに走るという点だそうです。
しかも、二作目は「007」の一作目「ドクター・ノオ/1962」後に慌てて製作したふうで1963年に公開され、二作目以降7作目までのシリーズでは各所で「007」の後追いやパクリを連発しているとのこと。うーむ何とも節操がなさそう。全7作で主人公ユベールを演じる俳優が5人も交代しているのもボンドとの相違点ですが、5作目の「東京の切り札」は「007は二度死ぬ」より早く東京でロケを敢行していたりとなかなかやりあってる感があって良いですね。
そういう「007」をちとパクったというか対抗意識を燃やした感じこそ愛すべき60年代スパイ映画なんですよねぇ。個人的にはミレーヌ・ドモンジョが出演している4作目の「リオの嵐」がいちばん気になるところ。あー観てみたい。
全シリーズ
- 「OSSと呼ばれる男/O.S.S.117 NES’T PAS MORT」(1957/仏)
監督/ジャン・サシャ 出演/イヴァン・デニ(ユベール)、マガリ・ノエル、マリー・デア
- 「OSS117/OSS117 SE DECHAINE」(1963/仏・伊)
監督/アンドレ・ユヌベル 出演/カーウィン・マシューズ(ユベール)、イリナ・デミック、ナディア・サンデル
- 「バンコ・バンコ作戦/BANCO A BANGKOK POUR O.S.S.117」(1964/仏)
監督/アンドレ・ユヌベル 出演/カーウィン・マシューズ、ビア・アンジェリ、ロベール・オッセン、ドミニク・ウィルムス、アコム・モクラノンド
- 「リオの嵐/FURIA A BAHIA POUR O.S.S.117」(1965/仏)
監督/アンドレ・ユヌベル 出演/フレデリッック・スタフォード(ユベール)、ミレーヌ・ドモンジョ、ベレット・プラディエ、アニー・アンデルソン
- 「OSS117 東京の切り札/ATOUT COEUR TOKYO POUR O.S.S.117」(1966/仏・伊)
監督/ミシェル・ボワロン 出演/フレディック・スタフォード、マリナ・ヴラディ、コリン・ドレイク、アンリ・セール、吉村実子
- 「OSS117 殺人売ります/O.S.S.117 DOUBLE AGENT」(1966/仏・伊)
監督/アンドレ・ユヌベル 出演/ジョン・ギャヴィン(ユベール)、クルト・ユルゲンス、マーガレット・リー、ルチアナ・パルッツィ、ロベール・オッセン
- 「OSS117のヴァカンス/OSS117 prend des vacances」(1970/仏・伊・ブラジル)
監督/ピエール・カルフォン 出演/リュック・メランダ(ユベール)、エドウィジュ・フィエール、エルザ・マルティネリ、ジュヌヴィエーヴ・グラ
オリジナル版の解説は以上です。あとは2006年公開のパロディ版ですが…結論から言うとこれを観たらさらにオリジナル版が気になってしまいました。あー観たい観たい。
OSS117 私を愛したカフェオーレ(2006/仏)
これは完全なコメディでした。それもわりと品のないタイプの笑いですが好きな方は大好きなんじゃないでしょうかね。本国フランスでは評判が良かったらしく2009年には続編の「OSS117 リオデジャネイロ応答なし」まで製作されてます。
ストーリーはカイロを舞台にドタバタしながら問題解決といった感じなんですが、主人公ユベールを演じるジャン・デュジャルダンが良かったですねぇ。ユベールのおバカでド厚かましくもタフなキャラクターを見事に演じきっていました。合言葉が「シチューはおいしい?」「お勧めだ」とかその辺りもおもしろくて笑っちゃいましたね。
ジャン・デュジャルダン
ちなみに監督のミシェル・アザナヴィシウスとその妻でヒロイン役のベレニス・ベジョ、そして主演のジャン・デュジャルダンの同じトリオで製作された「アーティスト」(2011/仏)ではアカデミー賞5部門を獲得しているんですよね。
「アーティスト」でもやはりジャン・デュジャルダンは良かったですね。フランスのコメディアンで俳優ということなので、日本で言えばどうでしょう、大泉洋みたいな存在でしょうか。とにかくすばらしく存在感のある俳優さんです。
※続編の「OSS117リオデジャネイロ応答なし」は「フレンチ大作戦 灼熱リオ、応答せよ」のタイトルでDVDが発売されています。
以上、007人気に乗って製作された60年代スパイ映画から「OSS117」シリーズでした。