「狼は天使の匂い」(1972) 不思議な“匂い”の漂う映画

 

昨夜はルネ・クレマン監督の「狼は天使の匂い」(1972)という映画を観ました。

遅い時間から何となく見はじめて気づけば午前3時過ぎ。140分超えの大作でしたが、終わってみればどんな話しだったか説明し難く、何とも不思議な映画でした。

 

狼は天使の匂い(1972)

Story

オープニングは見知らぬ土地へやってきた少年からはじまります。彼は近くで遊ぶ子らと友だちになろうとしますが、拾おうとした紙切れは踏みにじられ、持っていたビー玉の袋はナイフで切られて転がり落ちてしまいます。

そこで場面は、若い男トニー(ジャン=ルイ・トランティニャン)がロマの男たちに捕まるシーンへと切り替わります。トニーは何とか男らをかわすと、逃げて逃げてひたすら逃げ回ります。これは後で明かされるのですが、実はトニーは昔カメラマンで、取材中ヘリで事故を起こしてラマの子どもたちを死なせてしまった過去があったのです。そしてトニーがある建物へ逃げ込んだとき、突然銃声が響き渡り、そこから別のストーリーと交錯していきます。

撃たれたのは見知らぬ男で、その男がトニーに大金を渡して死んでしまうと、また別の男二人が現れ、トニーは目撃者として彼らのアジトへ連れて行かれます。アジトでボスのチャーリー(ロバート・ライアン)と仲間らに出会い、金を渡すよう迫られたトニーは、大金は彼らが『仕事』の末、手に入れたものであり、殺された男は彼らの仲間だったことを知ります。チャーリーとの生死をかけた駆け引きをしているうち、次第に彼らと打ち解けていったトニーは、金を渡してついにチャーリーの仲間となります。

やがてチャーリーが企てた大仕事に加わったトニーでしたが、周到に準備を重ねた計画も、思いがけない人物の通報により、あっさりと破綻してしまうのです_。

 

 

Review

本当に不思議な映画でした。冒頭の少年のシーンも謎めいていますが、ロマの登場によって非常にミステリアスな雰囲気漂うオープニングとなっていて、その辺りから不思議ムードが漂い始めます。先日亡くなられたフランシス・レイによるすばらしい音楽もまた、その不思議な雰囲気を盛り上げ、映画を観ているだけなのに、見知らぬ異国へやってきた旅人のような気持ちになってきます。

トニーに都合の良すぎる展開は良いとしても、ものわかりの良すぎるチャーリーや、男前トニーの登場によって急に女っけが出てしまいキャラがブレまくるシュガーにペッパーという名のふたりの女、そして無駄にキャラクター色の強いその他の仲間たちがやけに抜けているのも不思議です。さらにはブラスバンドのエキセントリックすぎる女の子と、少女のまま大人になった女の子…。あまりにも強烈すぎるキャラクターのオンパレードで、最早何の映画を観ているのかよくわからなくなって混乱してしまいました。

そして盗賊団とも言うべき悪の組織のはずのチャーリー一味が、やけに仲良しムードいっぱいなのも不思議ポイントです。仲間たちの『仲良し』的描写がやけに多く、長い時間を使っているなぁと思って観ていたのですが、観終わってようやく納得できました。それはこの映画が、『友情』の映画だということにようやく気づいたからです。そう考えるとラストで再び登場する少年のシーン(この少年はどうやらチャーリーのようです)の意味も理解できます。

そもそもルネ・クレマン監督後期の作品であるこの映画は、フランスの実力派俳優ジャン=ルイ・トランティニャンとアメリカの名優ロバート・ライアンの組み合わせによるダブル主演という点からしてまったく不思議で、監督の頭の中にある『夢』をそのまま映画にしてしまったような、そんな雰囲気さえ感じました。しかし、丁寧に撮られた映像と良き音楽、そしてこの何とも不思議な雰囲気によって、忘れがたい映画となりました。

それからシュガーを演じたイタリアの女優レア・マッサリさんの美しさも印象深かったです。美しい女性がキッチンで楽しげに料理を作る姿っていうのは本当にいいものです。もうひとりのペッパー役のティサ・ファローはミア・ファローの妹さんだそうですが、彼女の特徴は何と言っても声です。か弱い感じのかわいらしい声と、大きな瞳が非常に印象的でした。

それにしても、「狼は天使の匂い」ってどんな意味なんでしょう。ことわざか慣用句か何かかと思いますが、考えてみればタイトルからしてどうも不思議な映画だったのですね。いずれ原作本を読んで真相を究明してみたいと思います。

それではまた。

 

 

作品情報

出演■ジャン=ルイ・トランティニャン

ロバート・ライアン

監督■ルネ・クレマン

脚本■セバスチアン・ジャプリゾ

音楽■フランシス・レイ

原作■デヴィッド・グーディス

1972年9月15日フランス公開 141分 カラー

 

 

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