グリニッチ・ビレッジの青春(1976)

 

こんばんは。

今夜の映画は「グリニッチ・ビレッジの青春」(1976年アメリカ)です。

この映画は、俳優としても活躍したポール・マザースキー監督の第5作目の監督作品であり、1953年にスタンリー・キューブリック監督の「恐怖と欲望」で俳優デビューを果たしたマザースキー自身の自伝的映画と言われております。

グリニッチ・ビレッジとは、ニューヨークにある地区の名称なのですが、1950年代から1970年頃には芸術家や同性愛者など自由な生き方を求めて人々が集まる場所として名高く、ビート・ジェネレーションやカウンター・カルチャーの中心地だったそうです。

グリニッチ・ビレッジと言えば、植草甚一氏の本にもしょっちゅう登場する地名ですので、当時はそれはエキサイティングな街だったのではないかと思われます。

現在も現役で活躍されている人気俳優、クリストファー・ウォーケンの若き日のお姿もお楽しみ下さい。尚、主演のレニー・ベイカーは1970年代に「ペーパー・チェイス」(1973)など何作かの作品に出演しましたが、残念ながら1982年に若くしてその生涯に幕を閉じたそうです。

それでは作品情報をどうぞ。

 

 

作品情報

『ハリーとトント』のポール・マザースキー監督による、ほろ苦い青春ドラマの秀作。1953年のグリニッチ・ビレッジを舞台に、街に集う若者たちの焦燥と迷い、そしてそれを乗り越え成長していく姿を、ペーソスを交えながらノスタルジックに綴る。

「キネマ旬報社」データベースより

 

出演■レニー・ベイカー

シェリー・ウィンタース

エレン・グリーン

クリストファー・ウォーケン

監督・脚本■ポール・マザースキー

音楽■ビル・コンティ

第29回カンヌ国際映画祭出品作品

1976年2月4日公開(アメリカ) 111分

 

 

感想・レビュー

★★★★☆ 4

主人公ラリーにとって特別な場所であるグリニッチ・ビレッジという地で、仲間たちと共に過ごし、夢に向かって努力した日々。それはまさに「青春」そのものであり、若い頃だからこそもてる最高で最強の時間ではないでしょうか。そんな儚くもまばゆい青春に乾杯!

グリニッチ・ビレッジへ

ラリー(レニー・ベイカー)は、過保護な母(シェリー・ウィンタース)とおとなしい父の住むブルックリンの家から、大きなトランクを提げ、一人暮らしをはじめるグリニッチ・ビレッジへと向かう。そこで恋人サラ(エレン・グリーン)や恋多きゲイの黒人バーンスタイン(アントニオ・ファーガス)、詩人のロバート(クリストファー・ウォーケン)、しっかりもののコニーらに出会い仲良くなる。ある日自殺未遂を繰り返すアニタ(ロイス・スミス)からの電話で彼女の住む部屋へ向かったラリーたちは、死にきれずに苦悩するアニタを見つけ皆で慰める。

 

スターを目指し、風変わりな人々が集う街へ移り住んだラリー。ブルックリンからグリニッチ・ビレッジへ向かう時に流れるデイヴ・ブルーベックの「トルコ風ブルーロンド」が良いですね。ラリーが駅で、スターになってオスカーを受賞したという設定でスピーチするシーンは名シーンです。アニタがしきりに「生きていたくないの」と苦悩するシーンや、やたらと後ろ向きなサラのセリフが印象的ですが、夢や自由を求めてグリニッチ・ビレッジへとやってきても、現実は厳しく、誰しも押しつぶされそうになりながら必死で生きているんですね。

サラの妊娠

自然食の店で働きながら芝居の稽古に打ち込むラリーだったが、ふざけてばかりいるのを、傷つくことを恐れた現実逃避と講師に指摘される。ラリーの新居の様子を見に来た母とも言い争いになるが、ラリーを心配する母の気持ちも分かろうと努力する。そんな時、サラから妊娠を告げられプロポーズするも、サラは堕ろすと言ってきかず、ロバートの紹介で中絶手術を受けるのだった。

 

ラリーが芝居の稽古で講師に問題点を指摘されるシーンは、あまりに的を得た指摘で見ているこちらまではっとさせられます。息子が心配でたまらない母親と自然食の店の店主は、かなりナイスキャラクターですね。いつも退屈そうで、ただ「自由」を追い求め「ここじゃないどこか」へ行きたいサラの不安定な気持ちも痛いほどよくわかります。若い頃ってこんな感じなんですよね。

オーディション、そして

役者仲間から映画のオーディションの話を聞いたラリーは、一次面接を通過してスクリーン・テストを受ける。そんな中、再びアニタの自殺騒動やバーンスタインの引きこもり事件が起こる。現実に押しつぶされ、崩れだした仲間たちの夢や理想。そこへロバートがメキシコ旅行の話を持ちかけてくるが、ラリーはオーディションの連絡待ちで参加できない。ラリーが行かなくてもメキシコへ行くと言い出したサラを、行かないよう説得するラリーだったが、そこでサラから意外な真実を聞かされることになる。そしてラリーのオーディションの結果はいかに…。

 

アニタやバーンスタインだけでなく、サラやロバート、そしてコニーまでもが、理想と現実の違いやよくわからない不安に苦悩し、自分を見失っていくのが見ていて何だかやるせないです。特にロバートには非常にがっかりさせられますが、それもまた青春なのかもしれないですね。

そして、ラストでは相変わらず口うるさい母親に対し、怒鳴らずに聞き流し、強くやさしい男に成長したラリーの姿が描かれています。

 

[

 

ひとりごと

若い頃はなぜか謎の自信に満ち溢れ、何でもできるような気がするものですが、その分うまくいかない時には思いっきり落ち込んでしまいますよね。それは誰にもあることで、避けては通れない道ではないかと思うのですが、結局、それでも自分を信じ、見失わずに進んでいける強さが必要なんですよね。

私自身もすぐにへこたれて夢を諦めてしまうタイプですので、この映画を観ていると非常に心苦しい気持ちにもなりますが、そんな思いにさせてくれるっていうのも映画の醍醐味ではないかと思います。

そして今となっては、夢がかなった人もそうでない人も、グリニッチ・ビレッジという聖地で青春を過ごせた人々がただただ羨ましいです。

それではまた。

おやすみなさい。

 

[

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です