ぼくの伯父さんの休暇

 

こんばんは。

今夜おすすめの映画は「ぼくの伯父さんの休暇」(1953年フランス)です。

この映画は、パントマイムやスポーツネタの芸で、舞台俳優として人気を博したジャック・タチの第二作目の監督作品であり、タチ自ら演じる「ムッシュー・ユロ」が初登場した作品です。ムッシュー・ユロとは、小さな帽子とレインコートと寸足らずのズボンを身に着けたのっぽのおじさんで、いつでも傘を持ちパイプをくわえた無口でおとぼけなキャラクター。ただし、この「ぼくの伯父さんの休暇」ではバカンス仕様なのか、開襟シャツ&ジャケットに白ズボンで、パイプはあるものの傘はなしになっております。

この作品後、「ぼくの伯父さん」(1958)、「プレイタイム」(1967)、「トラフィック」(1971)と、計4作品でこの「ユロ氏」が様々な騒動を巻き起こす訳ですが、特に前後の物語につながりはなく、あくまでキャラクターとして同じユロ氏が登場する形となっております。

ユロ氏がバカンスへ出かけた海辺やホテルでのシーンがほとんどだったような気がしますが、この映画を観てモーレツにバカンスへ行きたくなった事だけはしっかりと記憶しております。

それでは作品情報をどうぞ。

 

 

作品情報

海へとバカンスへ向う人々の中にユロ氏(ジャック・タチ)のおんぼろ車の姿もあった。ガタガタと音を立てながらゆっくり走るこの車が、とある海辺のリゾートホテルに着いた頃には、すでに殆どの人はホテルでくつろいでいた。そんなホテルの客たちと共に、ユロ氏のバカンスも始まるのだった。

出演■ジャック・タチ

ナタリー・パスコー

アンドレ・デュポワ

監督・脚本■ジャック・タチ

音楽■アラン・ロマン

1953年2月25日公開(フランス) 88分

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感想・レビュー

★★★★★ 5

久しぶりに観ましたがジャック・タチの天才っぷりにただただ驚かされました。この映画のイメージでお洒落してバカンスへ出かけてみたいものです。できればユロ氏と同じように、こぢんまりとした海辺のホテルでのんびりできたなら、それこそ人生の喜びではないでしょうか。

バカンスへ

バカンスシーズンが到来し、汽車も駅も人で溢れかえっていた。その人の群れの中に、きれいなマドモアゼル、マルチーヌ(ナタリー・パスコー)の姿もあった。汽車だけでなく、バスもすし詰めで大賑わい。そんな中、田舎道をひどい音をたててのろのろと走るユロ氏(ジャック・タチ)のおんぼろ車の姿があった。後ろから来る速い車に追い越されるたび、わき道に乗り上げて壊れそうになり、道の真ん中へ寝転んだ犬をヘンテコなクラクションでどかし、何とかして海辺のホテルに辿り着いた頃には、もうホテルの客たちはラウンジですっかりくつろいでいた。ユロ氏が荷物を入れるため扉を開けると、強風で客たちの新聞や帽子やひげがはためき、注いだ紅茶もカップから外に流れる始末。見かねたホテルのボーイが、たらいの水を両手に持ったまま後ろ足で扉を閉めようとした瞬間、ユロ氏がすばやく扉を閉めて中に入り、ボーイは水をぶちまけてしまうのだった。

駅員のアナウンスに振り回され、ホームを客たちがいちいち大移動するという冒頭のシーンからしておかしくて笑ってしまいました。しかし、カメラのアングルやカット割り、おんぼろ車の爆発するようなエンジン音まで完璧です。こんなにも作り込まれているのに笑えるって本当にスゴイ。

バカンス客とボーイたち

翌朝、ユロ氏のとなりのホテルに泊まっているマルチーヌがレコードに針を落とすと、いよいよバカンスが始まる。海辺をただ散歩しているだけの老夫婦や、バカンス先にまでしょっちゅうビジネスの電話がかかって来る男とその家族。虫眼鏡を使って浜辺のテントを燃やすいたずら好きの子どもとその母親など、様々なバカンス客に混じってユロ氏の姿もあった。ボーイが鐘を鳴らすと昼食の合図。客たちは一斉にホテルへ戻り、レストランはすぐに満席。客たちが好き勝手に大声で叫ぶメニューやドリンクの声だけが、静かな浜辺に響きわたるのだった。

レコードに針を落とすと、いつも同じBGMが流れ出すあたり洒落てますよね。バカンス客たちのキャラクターも非常に細かく設定されていておもしろいので、ひとりひとりをよく観察して楽しんでいただきたいと思います。

カヌーとテニスとバカンスの終り

ホテルのラウンジで客たちがくつろいでいる時、となりの小部屋で爆音でレコードを聴きだし、まわりの客やボーイに煙たがられるユロ氏。カヌーで出かけるも、海へ出た瞬間まっぷたつに折れてサメに間違われたり、バスに乗り遅れた客を例のおんぼろ車で送ろうとしたところ、車がパンクしてお墓へ入っていってしまったりとてんやわんや。そんなある日、テニスラケットを買い、変なフォームでテニスをしてみたところ、次々と相手を倒し、マルチーヌに気に入られる。翌日には乗馬をする約束をしたものの、馬が言うことを聞かずにまたひと騒動。思わずその場を逃げ出したユロ氏だったが、その夜のダンスパーティではマルチーヌとダンスをして楽しむ。翌日はまたしても車のトラブルで、夕食にも間に合わず、夜遅くに爆音をたてながらようやく戻ってきたものの、最後にとどめの愉快な騒動を巻き起こし、ユロ氏のバカンスは終わるのだった。

あちこちで騒動を巻き起こすユロ氏が本当におもしろくて、観ているだけで陽気なバカンス気分を味わえます。それにしても最後の騒動はいちばんおかしくて笑えました。

 

 

ひとりごと

今回2015年に発売された最新バージョンのDVDでこの「ぼくの伯父さんの休暇」を観ましたが、以前観たときに比べて格段と画質や音質が良くなっていて驚きました。ジャック・タチはこの映画を、1962年と1978年に二度再編集を行い、完成度にこだわり続けたそうですが、それだけのこだわりと愛情が観る側にも十分伝わってくるすばらしい作品だと思います。

ストーリーについては、いろいろと書いてはみましたが、正直説明なんて必要ありません。ただユロ氏の愉快なバカンスを一緒に楽しんでいただければそれでいいと思います。

ちなみにこの小さな海辺のホテルは現在もあるそうで、この映画のロケ地として観光化され、なんとユロ氏の銅像まで建っているそうですよ。詳しく書かれたサイトがありましたので、気になる方はそちらを観てみてください。→ コロル・パリ

さて、よく考えるとこの作品に甥っ子は一切登場しませんが、日本ではジャック・タチの次回作である「ぼくの伯父さん」(1958)が先に公開されたため「ぼくの伯父さんの休暇」という邦題がつけられたんだそうです。

今夜はいい夢が見られそう。

それではまた。

おやすみなさい。

 

 

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