「去年マリエンバートで」(1961)を好きか嫌いか決めておく
ずっと気になっていたけれど、なかなか観る機会のなかったアラン・レネ監督長編第二作「去年マリエンバートで」(1961)をようやく観た。噂どおりの問題作だった。公開当時から現在に至るまで賛否分かれ続けるというのも納得だ。ともかく私の賛否を先に言っておくと…残念ながら答えはノン。おそらく私はこの映画をもう観ることはないでしょう。
去年マリエンバートで(1961)
Story
巨大なバロック様式の館で夜会服を身に纏った人々が演劇やゲームなどに興じ、夜な夜なパーティをしている。ある男X(ジョルジュ・アルベルタッツィ)が女A(デルフィーヌ・セイリグ)に「去年」マリエンバート(かどこか)で関係を持ったと言い、女は知らないと答える。まわりの人々はふたりの様子を気にするでもなくひたすらパーティを楽しむ。やがてAの夫(かもしれない)男M(サシャ・ピトエフ)がふたりの様子を伺いはじめ、Aは怯える。しかしXはAにひたすら「去年」の話をし続ける。
Review
脚本を書いたアラン・ロブ=グリエは、黒澤明の「羅生門」に触発され、芥川龍之介の「薮の中」を下敷きにしたそうで、言われてみれば「薮の中」に似た話しではある。ただ映画としてはアントニオーニやブニュエル然り60年代初頭に流行したという難解映画の中でも断トツトップの難解さだ。
しかしバロック様式の建物をひたすら撮りまくった映像美と(当時としては)斬新なフレームワークが実にすばらしく、カットのひとつひとつが不気味なくらい美しい。ある時には全てが静止していたり、全く無関係のカットが差し込まれたり、時系列も一切バラバラだがその辺りも悪くない。けれどなぜだかつまらない。正直94分がまあ長かった。綿密に作り込み過ぎているのがどうも好きになれないのだ。
しかもストーリーを冷静に考えると、壮大なバロック様式の屋敷でひたすら去年やったやらないでモメ続けるわけですから。誰かの夢を覗き見しているような、あまりに夢幻的でフランス風に言うと“気どり”がどうも鼻につく映画でした。
ちなみに劇中でフランス式の庭と言っている幾何学の庭園やすばらしいお城はミュンヘンだそう。トリュフォーの「夜霧の恋人たち」を観て大好きになったデルフィーヌ・セイリグも、この作品や同じくアラン・レネの「ミュリエル」では常に悩ましげな表情のダメ女で魅力半減。何だかパッとしない。衣装はシャネルと言われ一部は実際そうだが、そのほとんどはベルナール・エヴァンによるものなんだそう。
作品情報
出演■デルフィーヌ・セイリグ(女A)
ジョルジュ・アルベルタッツィ(男X)
サシャ・ピトエフ(男M)
監督■アラン・レネ
脚本・台詞■アラン・ロブ=グリエ
1961年9月29日公開(フランス) 94分 モノクローム
アラン・レネ監督の代表作ですので、とにかく観ることができて良かったです。一度は観て自身の好き嫌いを決めてみるといいかも知れません。それではまた。