究極のカルト映画「キッスで殺せ」(1955)

 

フィルム・ノワールを観はじめて以来、憧れ続けた幻のカルト映画「キッスで殺せ」(Kiss Me Deadly 1955/米)をついに手に入れました。

息つく間もなく次々と悪が襲いかかり、残虐性を秘めたショットの数々により我々は恐怖に陥れられ、目を覆わずにはいられません。そして深まる謎によって混乱し、今どこにいて何が起こっているのか、いつまでたっても現在地は見えぬまま。それでも暗闇を手探りで進むように観続けていると、最後の最後になって、あまりに鮮烈であまりに衝撃的なラストシーンが我々を待ち受けるのです。

公開時、フランソワ・トリュフォーやクロード・シャブロルがカイエ・デュ・シネマ紙で大絶賛したと言われるこの映画、確かに一度は観ておいて損はない超衝撃作でした。

 

 

キッスで殺せ(1955/米)

さてこの映画ですが、とにかくオープニングとラストがヤバイんです。

裸足にコートを羽織っただけの美女が、息を切らして死にものぐるいで夜のハイウェイをひた走り、通りすぎる車にすがりつくようにヒッチハイク。ついには走る車の前に命がけで立ち塞がり、車は路肩に乗り上げ急停止。無理矢理に止められたその車こそ、主人公マイク・ハマー(ラルフ・ミーカー)の乗る白のジャガーだったのです。

ラジオからはナット・キング・コールの『ラザー・ハブ・ザ・ブルース』が流れ、つかの間落ち着きを取り戻したように見えた女。彼女の名はクリスティーナ(クロリス・リーチマン)。しかしマイクが何を尋ねても、迫り来る恐怖に震え、ひたすら“何か”に怯え、訳を訊かずにバス停まで送って欲しいと言うばかりです。途中、検問情報がラジオから伝えられ、クリスティーナが精神病院から逃げ出したことが明らかになるのですが、検問を何とかかわし、あと一歩でバス停という所まで来て、クリスティーナは

『バス停に着いたら私を忘れて。でももしもバス停まで辿りつかなかった時は、私を覚えていて。』

と訳のわからないことを言います。

そしてバス停直前、突然黒い車が横から飛び出すと、マイクの車を塞ぎまたしても急停止。

次の場面では、ハマーはベッドに倒れ意識がなく、奥では吊るされた女の足のショットと共に女の痛烈な悲鳴が響き渡ります。その後意識のないまま二人は車ごと崖から突き落とされデッド・エンド。しかしハマーだけは一命を取り留めるのです。

ここまでのオープニングの疾走感と緊迫感!本当に凄いです。心はもうがっつり鷲づかみにされてしまいます。

怯えるクリスティーナの様子からその“何か”への只ならぬ恐怖感がひしひしと伝わるものの、何が起こっているのか、予測もつかず全くわからないまま。わかっているのは、マイクがとんでもない事件に巻き込まれたということだけです。

その後マイクは、恋人でもある秘書ヴェルダ(マキシン・クーパー)と自動車屋のニックを使い、精神病院から逃げ出した謎の女クリスティーナについて調べ始めます。多くの怪しい人物が浮かび上がっては消え、誰もが何かに怯え口を閉ざし、謎は深まるばかり。警察からも悪の組織からも追われるその“何か”とは一体何なのでしょう。マイクは警察からも悪の組織からも、その“何か”から手を引くよう迫られるのですが、なぜか手を引きません。

ある時は尾行され格闘し、ある時はこちらから押しかけ、友を亡くし、監禁され、恋人を誘拐され…悪の組織の黒幕さえ明かされぬまま、終わりのない駆け引きだけがひたすら続きます。

やがて、クリスティーナのルームメイトだったリリー・カーヴァー(ギャビー・ロジャース)という女と出会い、ようやく糸口を見つけたマイク。クリスティーナが隠し持っていた鍵を手に入れ、スポーツクラブの小さなロッカーに隠されていたその“何か”こそ、誰もが口を閉ざす恐ろしい国家絡みの秘密だったです。

そして一度観たら決して忘れられない、あの鮮烈で衝撃のラストがやってくるのです。

 

何だかチンプンカンプンかも知れませんが、とにかく最後の最後まで“何か”を引っ張り続けるのがこの映画なのです。脚本家のA.I.ベゼリデスが、原作であるミッキー・スピレインの『燃える接吻』に大幅なアレンジを加え、結果的にこの『究極のカルト映画』が生れたようですが、全くとんでもない映画を撮ったものです。

ただ、ラストに大オチを持ってくる映画によくありがちなように、残念ながらオープニング開けの中盤が、ひたすら暴力対暴力の戦いのみで、肝心の秘書の話しはスルーされ、あのすばらしいオープニングに比べて正直パッとしません。

それから肝心な主人公マイク・ハマーのキャラクターが、どうもふわふわしているのも気になりました。

まず、金で動くはずの探偵であるマイクが、誰からの依頼も無くこの事件に首を突っ込む動機がハッキリしません。そして、新車の高級車(しかもオープンカー)に、録音装置つきの電話が設置された小ぎれいな事務所兼自宅があるのも、何だか探偵らしからぬ金回りの良さでしっくりこないんです。まるで『007』のジェームズ・ボンドのようなのですが、やけに女にもてるのはいいとしても、あらゆる問題をすべて力ずくで解決するという点が、スマートで洗練されたボンドとは大違いです。

ずっと観たかった作品で、期待値が高かったせいもあるとは思いますが、キレまくりのオープニングと、衝撃のラストが良過ぎるだけに、この中盤がどうも残念でなりませんでした。ただ、一度は観ておきたい映画だったので、観られて本当にうれしかったです。

それではまた。

 

 

作品情報

監督■ロバート・オルドリッチ

出演■ラルフ・ミーカー

アルバート・デッカー

ポール・スチュアート 他

1955年5月18日公開(アメリカ) 107分 モノクローム ヴィスタサイズ

 

 

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2件のフィードバック

  1. k.t__cinephile より:

    こんにちは!
    キッスで殺せ!
    なんとしても観たいなぁ、と思って買おうか考えているところです。参考になりました〜✨✨✨

    • yukico より:

      こんばんは☆
      「キッスで殺せ」すごい衝撃作でした!今は高値ですが、わりと有名な作品なのでそのうち廉価版か発売されそうな気もします〜!

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