若尾文子の映画「花実のない森」(1965)あまりに美しすぎたために不幸であった女?
待望の初DVD化で先月(2017年11月)発売された若尾文子さん主演映画「花実のない森」を早速買って観てみました。原作は松本清張さんの同名推理小説。“世にも妖しい魅力の女”を若尾さんが演じてますが、まあほんとゾッとするほどに美しくてうっとりでした。
花実のない森(1965)
Story
自動車セールスマンの梅木(園井啓介)はある日山道で車が故障して立ち往生している女性二人組みを車に乗せホテルへ送り届ける。ひとりは中年のファッショナブルな女(角梨枝子)、そしてもうひとりは「世にも妖しい魅力の女」江藤みゆき(若尾文子)だった。みゆきが梅木の車に手帖を忘れたことから再会すると、梅木はみゆきに様々な質問をするのだが、みゆきは正体を明かさない。そんな謎の美女みゆきに魅かれた梅木が再びホテルを訪ねると、すでにみゆきは消えていたが、そこで浜田(船越英二)という男から自分もみゆきを探していると声をかけられる。あらゆる手段でみゆきについて調べた梅木は、みゆきが楠尾産業社長の楠尾英通(田村高廣)の妹で、既婚者であることを知る。早速楠尾家へ向かいみゆきと一夜を共にするも謎は解けず、みゆきからは詮索しないで欲しいと釘をさされる。そんな中、偶然下町のぼろアパートでみゆきに似た女を見かけた梅木は、みゆきに直接そのことを尋ねるも人違いとかわされる。しかしどうにも気になり再度アパートへ向かった梅木は、そこで楠尾が部屋から慌てた様子で出てくるのを目撃する。驚いた梅木がその部屋を尋ねると、そこにはひとりの男が殺されていたのだった。その事件をきっかけにみゆきのまわりの男たちが次々と殺され、ついには梅木も狙われる。果たしてみゆきは何者なのか?そして殺人事件の犯人とは?
Review
★★★☆☆3
これねぇ。何というかこの主人公の梅木がまあしつこくて観ていてイライラしちゃうんですよね。若尾さん演じるみゆきのキャラクターが良いだけに余計にそこが目につくんです。みゆきを好きなのかただの興味本位なのかハッキリしないところも腹立たしいですし、そのくせやけに厚かましくって事あるごとに正義感を振りかざすタイプ。ま、そうでないと話が進まないので仕方ないと言えばそうなんですが、ハッキリ言ってこの梅木が疫病神なんです。コイツが執拗にみゆきを追いかけ回して「真実」を知ろうとしたがためにみゆきがどんどん不幸になっていくっていう。そういうストーリーです。そっとしておくっていう選択肢のない男なんですよ、梅木は。しかも散々掻きまわしといてラストにしれっと「あまりに美しすぎたために不幸であった女」と他人事っぽく回想するシーンでイライラマックス!お前だろ!美しい若尾さんが観たいだけなのに少々ストレス感じることになりますのでご注意です。
見どころピックアップ
- みゆきはある男に復讐心を抱いていてそのために遊び歩いているお金持ちの奥さんなんですが、こういう吹っ切れた女を演じる若尾さんもまた良いですね。お洒落して若い男と軽く遊んでみたり、兄には「そんなに興奮なすってみっともなくってよ」とぴしゃり。でも主人公の梅木に対してはやけにやさしくて素直なのが不思議でここにもイライラポイントあり。いっそもっと悪女でも良かったように思いました。
- 梅木の恋人役の節子という役で江波杏子さんが出演していますが、江波さんが良いです。やはり存在感のある女優さんです。
- 最初に登場するデザイナー役の角梨枝子さんが可愛らしくってとてもステキです。
- みゆきの若い恋人役で「しとやかな獣」の川畑愛光さんが出演してます。馬に乗るシーンは意味不明でしたが若尾さんとのイチャつきシーンはなかなか良かったです。確か「傷だらけの山河」にも出演してました。
- 船越さん良いですね。この役船越さん以外に考えられないほどハマリ役です。楠尾役の田村高廣さんも気持ち悪くて良かったです。
作品情報
出演■若尾文子(江藤みゆき)
園井啓介(梅木隆介)
田村高廣(楠尾英通)
船越英二(浜田)
江波杏子(節子)
監督■富本壮吉
脚本■船橋和郎
以上、先月発売されたばかりの若尾文子さん主演映画「花実のない森」(1965)についてのご紹介でした。※こちらは今のところレンタルの取り扱いはなさそうです。