フォロー・ミー
こんばんは。
今夜は「フォロー・ミー」(1972年 イギリス )を観たいと思います。
この映画は、「第三の男」(1949)で知られるキャロル・リード監督の遺作となった作品で、主演を務めるのは、ロマン・ポランスキー監督「ローズマリーの赤ちゃん」(1968)での初主演で数々の賞を獲得し、一躍人気女優となったミア・ファローです。
「ローズマリーの赤ちゃん」は私も観ましたが結構怖くて、こちらもおもしろい映画です。
そして、ミア・ファローと言えば、やはり大胆にカットしたショート・ヘアですよね。彼女ほどショート・ヘアの似合う女優は、後にも先にいらっしゃらないのではないでしょうか。この映画でもそのチャーミングなショート・ヘア姿を見せてくれていますが、彼女の着こなす70年代らしいサイケなヒッピーファッションにも注目していただけるといいと思います。
それでは作品情報をどうぞ。
作品情報
会計士のチャールズは、妻のベリンダの行動に疑問を抱いていた。彼は私立探偵のクリストフォルーに、妻の行動を探るように依頼する。ベリンダはただ単に、日常の倦怠を散歩によって紛らわせていただけだったのだが、クリストフォルーの尾行に気づいて以来、次第に探偵自身に好意を抱いていく……。
出演■ミア・ファロー
トポル
マイケル・ジェイストン
監督■キャロル・リード
脚本■ピーター・シェーファー
音楽■ジョン・バリー
1972年7月18日公開(アメリカ)
感想・レビュー
やはり良いですね。ストーリーも良いですし、ミア・ファローのキュートなヒッピーファッションも最高でした。そしてクリストフォルー役のトポルがやはり最高です。ミア・ファロー演じるベリンダと一緒にロンドンを歩いているような、観光気分が味わえるのもいいですし、ジョン・バリーのテーマ曲もなかなかで、悪いところが見当たりません。洒落た小品。お勧めです。
白いレインコートとマカロンの男
チャールズ(マイケル・ジェイストン)には、アメリカ人の妻ベリンダ(ミア・ファロー)がいるのですが、結婚してしばらく経った頃から、妻の行動が理解できず、浮気の疑念を持つようになり、探偵事務所へ調査を依頼します。しばらくすると、チャールズの職場に白いレインコートを着た謎の男が現れるのですが、それは依頼した探偵の代理の探偵、クリストフォルー(トポル)だったのです。このクリストフォルーという男が、余計な話ばかりでなかなか本題に入らず、ポケットからマカロン、カバンからフルーツやヨーグルトなどを取り出し好き放題に食べ散らかします。そんなクリストフォルーに多忙なチャールズはイライラしつつ、妻との馴れ初めをしつこく聞かれ話し始めます。ちなみに最初に依頼した探偵は、探偵らしい事故で入院中なんですが、この辺りの細かいネタもおもしろいので、クリストフォルーの話をしっかり聞いてくださいね。
チャールズとベリンダ
好きになれる女性に出会えずにいたチャールズは、ふとしたきっかけで、カリフォルニアから来たベリンダと知り合い、彼女を食事に誘います。ベリンダはチャールズが今まで出会ったことのない自由で素直な女性で、すぐに惹かれ合いやがて結婚します。この出会いのシーンはわりとテンポよくさらっと描かれていますが、ひとつひとつのエピソードがかわいらしく、すてきなシーンが多くあります。
英国のしきたり
結婚すると、大切な客を家へ招いたり音楽会に出かけたりと、様々な妻の仕事があるのですが、会話やマナーには英国のしきたりがあり、ベリンダは全く馴染めません。そして次第に約束に遅れてきたりすっぽかしたりするようになり、妻としての仕事をしないベリンダにチャールズは腹を立てるのですが、この辺りは英国紳士の硬さに対するちょっとした批判も含まれているのかも知れませんね。
尾行から見えたもの
チャールズの話を聞いたクリストフォルーは、ベリンダの調査結果を報告し、その結果ひとりの男性の存在が浮かんできます。チャールズはいてもたってもいられず、ベリンダを問いただすと、ベリンダはついにその男の話を打ち明けるのですが…。
ひとりごと
ベリンダはさみしさを紛らわすため、ひとりロンドンの街をあてもなくさまよっていたのですが、ハイド・パーク、テムズ川の遊覧船、ナショナル・ギャラリーなど、ロンドンを代表する観光地をさまよい歩くんです。さらに、ベリンダとクリストフォルーがロンドンの街をとにかくひたすら歩き回るので、ロンドンの観光案内としても楽しめる映画だと思います。
そしてベリンダが、「ミケランジェロコーヒー」で「ピサの斜塔」を食べていたり、二本立てのホラー映画を6時間20分も観ていたりと、おもしろいところへ出かけて行っては、思い切り楽しむ姿がすごくカワイイんですよね。こんな可愛らしい役をミア・ファローが演じているのですから、もう本当に可愛らしくてたまりません。この姿をこっそり尾行して見ていたら、誰でも彼女を好きになってしまいます。それにしても、ミア・ファローのベルボトム姿やヒッピースタイルがすごく素敵でお似合いでした。映画を観るときの丸めがねもいいんですよね。
それから忘れちゃいけないトポルのクリストフォルーがもう最高のキャラクターです。この映画以外でトポルを観た事がないのですが、これだけの当たり役があれば役者としてはしあわせですよね。本人がどう思っているかはわかりませんけどね。
また、この映画は結局夫婦のあり方について描いているのかもしれないですね。お互い、自分にない部分に惹かれあい尊敬しあって、国や身分など飛び越えて結婚したはずのふたりが、結婚という契約にしばられるうち、うまくいかなくなる。妻は夫が、夫は妻が結婚前から変わってしまったと思っているところなんて、結婚したことのある方なら大いに頷けるのではないでしょうか。
チャールズはベリンダについて、「僕の陽気な生徒は半年後には謎の女になっていた」と語り、ベリンダは自由に好きな事をすることに「罪悪感を感じるの」と言ってから、「妻って何?」とチャールズに問いかけます。
お互い好きで結婚したはずなのに、難しいものです。
そんな時には、この映画のラストでクリストフォルーが言うように、ゆっくりと長い沈黙の底に沈み、相手をただ、見つめてみるのもいいかもしれません。
さて、長くなってしまいましたが、そろそろこの辺で。
おやすみなさい。