狂った果実

 

こんばんは。

今夜の映画は、「狂った果実」(1956)です。

この映画は、石原慎太郎の短編小説を、弟である裕次郎の主演を条件に映画化した作品で、慎太郎自ら脚本を手がけております。

俳優を目指し各映画会社のオーディションを受けるも、ことごとく不合格であった裕次郎も、この作品をきっかけに一躍スターとなり、後に妻となる北原三枝との初共演も果たしております。また、裕次郎と共に主役を務める津川雅彦は、裕次郎の強力な推薦により、この作品に抜擢されたそうです。

そして、監督を務めるのが、川島雄三や黒澤明などの助監督を経て監督デビューした中平康監督で、「狂った果実」は中平監督の二作目にして代表作と言われる作品です。また、この作品がパリで上映された際、フランソワ・トリュフォーが絶賛し、後のヌーヴェル・ヴァーグの作品に多大な影響を与えた作品とも言われております。

石原慎太郎はこの小説をなんと8時間で仕上げ、中平監督はこの作品をわずか17日間で撮影したそうで、若き才能がぶつかり合って生まれた奇跡の作品となっております。

それでは作品情報をどうぞ。

 

 

作品情報

夏久(石原裕次郎)と春次(津川雅彦)は対象的な兄弟だった。次々に女漁りをする夏久と違って、まだあどけなさが残っている春次は女を知らなかった。
そんなある日、春次は逗子駅ですれ違った恵梨(北原三枝)に心を奪われるが何もできなかった。
夏久と春次が海でモーターボートで遊んでいると、仰向けに泳いでいる女性がいた。偶然にも恵梨だった。それから、春次は想いを打ち明け恵梨と交際を始める。
ある夜、横浜のナイトクラブで外国人の男と踊る恵梨の姿を夏久は目撃してしまう。夏久は春次にこのことを秘密にすることを条件に関係を持つようになるのだが・・・。

 

GREAT 20 NIKKATSU 100TH ANNIVERSARY 1::狂った果実 HDリマスター版 [ 石原裕次郎 ]
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出演■石原裕次郎

津川雅彦

北原三枝

岡田真澄

監督■中平康

原作・脚本■石原慎太郎

音楽■佐藤勝、武満徹

1956年7月12日公開

 

 

感想・レビュー

今回初めてこの映画を観ましたが、評判通りなかなか良かったです。鎌倉から始まり逗子・葉山・横浜と、太陽族といわれた若者たちの退屈な日常に突如として現れたひとりの女。その女を巡って仲の良かった兄弟の関係が次第に崩壊していくわけなんですが、まぁこの女が悪いです。最悪です。そして裕次郎と岡田真澄はカッコ良すぎです。テンポの良さとスタイリッシュなカメラアングルは、即興的かつ芸術的であり、まさにヌーヴェル・ヴァーグ世界観と全く同じなんですが、逆に言えば丁寧さに欠ける部分がちょっとだけ残念な気もします。台詞が聞き取りづらかったりね。

若者たちと海

遊び人の兄、夏久(石原裕次郎)とやさしく奥手な弟、春次(津川雅彦)は正反対の性格なんですが、とても仲が良く、夏久は春次がかわいくて仕方ないんですね。ある日モーターボートに乗りに、鎌倉から逗子まで電車で行く途中、春次は逗子駅で偶然出会った恵梨(北原三枝)をひと目で気に入ってしまいます。

夏久はいつも友だちフランク(岡田真澄)の家で、他の友だちも集まって皆で退屈や女について語り合ったり、お祭りで他の若者連中とケンカしたり、若さと時間を持て余している典型的な不良。仲間や弟と海で遊んでばかりいるのですが、これっておそらくお金持ちのご子息たちの遊び方ですよね。この辺りの金持ち感が、ちょっと鼻につくかと思いきや、裕次郎や岡田真澄があまりにカッコ良くスマートで、金持ちの息子役がはまりすぎて嫌味がないです。むしろ憧れちゃいます。お金持ちで足の長いハンサムな若者たちに海が似合わないはずがありません。このカッコ良い若者たちをフィルムに収めただけでもすばらしい映画と言えるでしょう。

悪い女

春次は再び偶然恵梨に会い、次第に仲良くなっていきます。一方夏久はある日横浜で、外国人の男と踊っている恵梨を見かける。夏久は、そんな遊び人の女を弟から遠ざけようと、恵梨にそのことを弟に黙っている代わりに自分とも関係を持つよう迫ります。

夏久も夏久なんですが、まぁ恵梨の何が悪いってとにかくはっきりしないんですよ。揺れる気持ちもわかりますけど、私としては、はっきりしない女ほど悪い女いないと思うんですよね。しかし北原三枝は、この嫌な女役を見事に演じてますよね。気の強そうな目つきと、優しさなのか優柔不断なダメ女っぷりが、観る側をイライラさせるほどの熱演です。

いつの間にか

そうこうしているうちに、春次はもちろんいつの間にか夏久まで恵梨にどっぷりはまってしまいます。春次もやっと恵梨と結ばれて浮かれるのですが、それを聞いた夏久は、しょっちゅう恵梨の家に押しかけ、気付けば完全にストーカーです。そして夏久は、春次の不在に恵梨から春次のもとへ届いた手紙を勝手に開けて読んでしまい、恵梨との約束の場所へ春次の代わりに行ってしまうんですね。

さぁもう夏久の暴走は止まりません。しかし、強引でめちゃくちゃな夏久が本当にカッコ良いんですよね。これは女性なら誰でも参っちゃうと思いますね。そうは言ってもやはり恵梨も悪いと思います。兄弟を天秤にかけるっていくら本気で迷ったとしてもダメ、絶対。そして、三人の男女の若さゆえの傲慢さが、このあと非常に残酷で衝撃的なラストへと向かうことになってしまうのです。

 

 

ひとりごと

裕次郎作品は何作か観ましたが、やはりいつ見てもカッコ良いですね。今回は岡田真澄も出演していましたが、これまたカッコ良くて素敵でした。津川雅彦も良いんですが、裕次郎とのダブル主演は正直ちょっと気の毒でしたね。当初は裕次郎が弟の春次を演じる予定だったらしいのですが、結果的には夏久が裕次郎で良かったんじゃないでしょうか。この映画を観たら、誰もが裕次郎に恋してしまう、そんな映画です。歌もうまいですしね。

そして、この映画が二作目という中平監督の才能も凄まじいですよね。

恵梨の胸元や足元を撮るカットが特に印象的でしたね。ダンスシーンも足元ですし、春次とふたり日光浴するシーンもふたりの足元ですよね。それからやはり、ラストシーンの空撮は本当にスタイリッシュです。1956年でこれですから。間違いなくヌーヴェル・ヴァーグに影響を与えてますよ。

中平監督は映画を内容よりも視覚芸術と捉えていたとのことですが、観終ってみると、確かに内容云々よりもひとつひとつのシーンの残像のが頭にこびりついているような気がしました。しかしこの映画を17日間で撮ったって、やはり天才ですね。

あとは細かいところですが、ケンカシーンで登場する裕次郎と津川雅彦の実の兄、石原慎太郎と長門裕之にもご注目下さい。

それでは今夜はこの辺で。

おやすみなさい。

 

 

 

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