映画「コレクター」(1965) テレンス・スタンプが演じる孤独な青年の歪んだ愛情

 

今夜はイギリスが生んだ名優テレンス・スタンプと出世作「コレクター」(1965年イギリス・アメリカ合作)について書きたいと思います。

 

テレンス・スタンプ

1963年に発表されたイギリスの作家ジョン・ファウルズのデビュー作「コレクター」を原作としたこの映画は、「ローマの休日」や「ベン・ハー」などで知られ、アカデミー賞監督賞を3度も受賞した巨匠、ウィリアム・ワイラー後期の監督作品のひとつで、テレンス・スタンプにとっては映画出演二作目の作品となります。

デビュー作「奴隷戦艦」(1962)でいきなりゴールデングローブ賞最優秀新人賞を獲得したテレンス・スタンプは、本作でもカンヌ国際映画祭男優賞を獲得し一躍イギリス映画界の人気俳優となります。(同じく主演のサマンサ・エッガーも本作でアカデミー主演女優賞とカンヌ国際映画祭女優賞を獲得)

以後、翌年の「唇からナイフ」(1966)をはじめ多くの作品に出演し、イギリスを代表する名優へと成長していく訳ですが、特にエドガー・アラン・ポーの原作をオムニバス形式で映画化した「世にも怪奇な物語」(1968)の第三話でフェデリコ・フェリーニ監督作品「悪魔の首飾り」での怪演は忘れられません。そんなテレンス・スタンプの出世作となった「コレクター」を詳しくご紹介いたします。

 

 

コレクター(1965)

Story

蝶の標本作りだけが趣味の内気で孤独な青年フレディはある日サッカーくじで大金を手にする。蝶の採取のため訪れた田舎町で、地下室のある屋敷を発見したフレディは、その屋敷を購入すると、以前から憧れていた美術学生のミランダをクロロホルムを嗅がせて誘拐し地下室に監禁する。意識を回復したミランダは恐怖に怯えるが、地下室はきれいに整理されミランダのための美術書やサイズの合ったドレスが用意されていた。そこへ食事を持ってフレディが現れ、身分の違うミランダと知り合うには誘拐するしかなかったと説明し、昔から憧れていたことを告白する。フレディの希望はただひとつ、ミランダが自分を愛してくれることだった。ミランダからの交渉の末1ヶ月で解放する約束を交わすと、ふたりの奇妙な同居生活がはじまる。身分差による劣等感に苦しみながらも、常に紳士的に接しミランダを愛し続けるフレディ。しかしミランダは地下室から逃げ出すことしか考えずフレディに歩み寄ろうとしない。ついに約束の日が訪れ、初めて一緒に食事したふたりだったが、フレディはミランダを解放しないと言い出す。絶望の淵に立たされたミランダは決死の覚悟で雨の中逃げ惑いフレディの頭をスコップで殴りつけるのだが…。

 

 

見どころピックアップ

  • いちばんの見どころはずばりテレンス・スタンプです。内気な青年の孤独とコンプレックスが生んだ異常な愛情と、美しいものへの執着心。完全にイカれた恐ろしい男にも関わらず、不器用で純粋でどこか憎めないのは、テレンス・スタンプの熱演によるものも大きいと思います。憧れのミランダを誘拐してまで傍に置いた時の小躍りと子どものようにピュアで嬉しそうな表情。逆に裏切られた時に見せる猟奇的な目つきの恐ろしさ。どちらも青年の本心であり、ミランダの言動ひとつでコロコロ変わるフレディの胸のうちが痛いほどに伝わってきます。そんな青年の二面性をテレンス・スタンプは実に見事に演じきっています。

  • ミランダを演じたサマンサ・エッガーもまた素晴らしいです。なかなか勇敢で気の強いミランダなんですが、お嬢様ならではの高慢さやインテリ気取りな雰囲気が鼻につき、誘拐されていてもあまりかわいそうと思えないほど。しかしそこがサマンサ・エッガーの凄さです。ただ、最終的には傷を負ったフレディを心から心配するミランダのやさしさと育ちの良さが描かれています。

テレンス・スタンプとサマンサ・エッガー

  • ミランダが閉じ込められる古い石造りの地下室が何とも不気味で良いです。ランプや本棚が用意され居心地が良さそうではありますが、窓のない地下室への監禁はやはり怖いです。
  • フレディが車に乗るシーンがあるんですが、ワンボックス型のこの車と、車で出かける時のキャスケットとコート姿のシックなファッションがなかなか良いんですよね。地下室に食事を持ってくる際いつもスーツでキメてくる姿も良いんですが、貧乏人のコンプレックス感が表現されているため素直にステキと思えない部分もあるんですね。まぁテレンス・スタンプは何を着ても似合うんですけどね。

ひとりごと

何とも若々しいテレンス・スタンプにまず驚きました。階級社会を背景としたイギリスらしいお話ですが、結局フレディは異常犯罪者なのか純粋すぎる青年なのか観ていてわからなくなってきます。ただラストシーンではその答えがはっきりと描かれます。ストーリーもおもしろくスリルとサスペンスに満ち溢れた名作ですが、意外と知られていない作品でもありますので、興味のある方は是非。

それではまた。

おやすみなさい。

 

 

作品情報

出演■テレンス・スタンプ(フレディ)

サマンサ・エッガー(ミランダ)

原作■ジョン・ファウルズ「The Collector」

監督■ウィリアム・ワイラー

脚本■スタンリー・マン、ジョン・コーン、テリー・サザーン

1965年6月17日公開(イギリス) 119分 イギリス/アメリカ合作 カラー

 

 

 

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