青空娘
こんばんは。
今夜は「青空娘」(1957)を観たいと思います。
この映画は、イタリアへの映画留学を経て、溝口健二や市川崑などの助監督を務めた増村保造の第二作目の監督作品で、増村映画に初めて若尾文子を起用した作品で、ご存知の通り増村監督はこの作品後、「妻は告白する」(1961)など20作以上の作品で若尾文子とタッグを組み、多くの名作を残すこととなる訳です。
主演を務める若尾文子は日本映画界で私のいちばん好きな女優さんなのですが、この「青空娘」では、まだあどけなさが残る可愛らしいお姿で明るく元気な女の子をさわやかに演じております。
それでは作品情報をどうぞ。
作品情報
伊豆の祖母に育てられていた有子(若尾文子)は、祖母の死を機に上京し父の許へ赴くが、そこで継母(沢村貞子)から女中のような扱いを受ける。しかし彼女は、かつて美術教師の二見(菅原謙二)からいつも青空のように明るく生きることを教えられていた。
出演■若尾文子
菅原謙二
川崎敬三
沢村貞子
ミヤコ蝶々
監督■増村保造
原作■源氏鶏太
脚本■白坂依志夫
感想・レビュー
すごく良かったです。観終わると気持ちが前向きになるような、若さ溢れる爽快な映画です。誰が見ても楽しめるストーリーと、可愛らしい若尾さんが存分に観られて最高です!
イントロダクション
若尾文子演じる有子が、岬で同級生と卒業してからの進路について話をしているところから物語は始まります。有子は祖母と二人暮らしをしていたのですが、東京の両親のもとへ行く予定になっています。そこへ美術教師の二見(菅原謙二)が有子の祖母が倒れたと知らせにきて、駆けつけた有子は祖母から本当の母親の存在を知らされます。有子は驚き戸惑うのですが、再び岬で青空を眺めながら、二見に元気づけられ東京へ向かいます。
最初の5分で物語は大きく展開し、不安な要素を含みつつも、明るく前向きな有子を大きな青空が見守るといった形でタイトルが出るわけですが、そんな事よりも、風に吹かれて岬に立つ若尾さんの可愛らしさに釘付けです。この映画の公開が1957年ですので、撮影時23歳だった若尾さんの若々しく輝かしい姿に一瞬でヤラレますのでご注意下さい。
東京へ
東京へ降り立つと、父の家の女中、八重(ミヤコ蝶々)が迎えに来るのですが、いざ家に着くと、父が他所の女に産ませた娘と、継母も兄弟も有子を家族とは認めず、女中扱いします。弟のヒロシ(岩垂幸彦)は悪ガキで、兄の正治(品川隆二)はジャズ狂いの太陽族、姉は化粧の濃い意地悪娘で、帰ってきた継母(沢村貞子)も有子を目の敵にします。おまけに父(信欣三)は出張中で、与えられた部屋は階段下の汚い物置。非常に幸先の悪いスタートとなるのですが、有子は気にせず明るく女中の仕事をこなします。そんな中でも、弟のヒロシとは有子が本気で向き合ってやり、すぐに仲良くなります。意地悪されても気にせず前向きで、物置の小さな窓を開けて「青空さん」とつぶやく有子。かわいすぎです。
卓球シーン
ある日、姉のボーイフレンドが集まって卓球大会が開かれるのですが、女中をしていた有子は、しつこく誘われ広岡(川崎敬三)と一戦交える事になります。この有子と広岡の卓球シーンがこの映画のひとつの見どころではないでしょうか。最初にポイント先取された後、エプロンを外し、スリッパを脱ぎ捨てて本気を出す有子がいいんですよね。川崎敬三も若くて素敵ですし、なかなか躍動感のある試合になっておりますので、楽しく観ていただけるシーンかと思います。
本当の母
やっと父が出張から戻りますが、優しいけれど煮え切らない父に有子はがっかりします。おまけに有子の事で父と継母がけんかになりひどく落ち込みます。そんな時、二見先生が東京へ越してくるとの電話を受け、元気を取り戻します。有子は、父から本当の母がどんな人であったか話を聞き、写真を貰います。その有子の留守中に、広岡の母(東山千栄子)が、有子と息子と結婚させたいと小野家にやってきてしまい、ボーイフレンドを横取りされた姉はカンカンに怒ってしまいます。結局有子は家を出て、二見のアパートへ行きます。二見は部屋に飛び込んできた有子に何も聞かず、しばらくここにいろと言いお金まで置いて出張へ出かけます。このシーンの二見が本当に素敵なんですね。極めつけは、元気のない有子に、「青空だよ」と言い残していくのですから、参っちゃいます。しかし、二見が出かけた途端に女がやってきて、有子は部屋を追い出されてしまうのです。
母を捜して
二見のアパートを追い出され、仕方なく広岡に金を借りて田舎に戻ると、つい3日前に本当の母が有子に会いにきたという話を聞きます。母は東京にいると聞いた有子は、再び東京へ出て母を捜す決意をし、田舎の友だち信子(八潮悠子)の叔母で、東京でキャバレーを経営しているマダムを頼って再上京します。このマダム(清川玉枝)がまた、最高にナイスキャラクターなんですよね。このシーンを観ると必ず、了解!って言いたくなっちゃいます。広岡と二見も協力して、有子の本当の母を捜すことになるのですが、意外なところから母の所在が明らかになっていくわけですね。そして、いつでも有子に協力してくれる優しい広岡か、前向きに生きる事を教えてくれた憧れの二見先生か、有子の恋の行方も気になるところです。
ひとりごと
この映画は、本当の母親を捜すというシンプルなストーリーなんですが、登場人物一人ひとりのキャラクターと、ストーリーに織り込まれた様々なエピソードがすごく良いんですよね。有子は、つらい時にも青空を見つめて元気を出す「青空娘」。女中の先輩である八重や、哲学にはまる魚屋(南都雄二)なんてのも登場しますが、二人とも存在感のあるおもしろいキャラクターです。スタイルの良い田舎の友だち信子も、有子に負けないくらい可愛らしいですし、前述の通りその叔母のマダムも最高です。そして、やさしく温かで平和主義の二見先生と、気が利いて「ちょうどいい」広岡は、本当に甲乙つけがたくて、女性なら本気で迷ってしまいますよね。
卓球での出会いっていうのもいいですし、細かいところでは、青空だけでなく飼い犬にあいさつする有子や、「いずれにしても彼女がしあわせになってくれればいい」と考える二見が本当に素敵で、観ている側を楽しませ、心を温かくさせてくれる映画なんです。この映画を観終わると、色々なシーンや登場人物について誰かと大いに語り合いたくなります。そういう映画はやはり、良い映画なんですよね。
そして何より、若くてかわいらしい若尾さんがやはりいちばんの見どころです。
それではまた。
おやすみなさい。