アニー・ホール

 

こんばんは。

今夜の映画は「アニー・ホール」(1977年 アメリカ)です。

この映画は、ウディ・アレン監督作で、自ら主演し、アカデミー賞監督賞を始め数多くの賞を獲得した作品です。

もうひとりの主役である「アニー・ホール」を演じるのは、現在も多くの映画に出演し続ける人気女優、ダイアン・キートン。彼女もこの映画でアカデミー賞主演女優賞を獲得しています。また、この映画での彼女のファッションが話題となり、「アニー・ホール・ルック」と呼ばれ70年代後半の若者のファッションに多大な影響を与えたそうです。この映画での衣装は、スタイリストの言うことを聞かず、ダイアン・キートン自身が着たい服を着ていたとの事ですが、確かにアニーのファッションがとてもお似合いで素敵なんです。すごくセンスの良い女優さんである事が伺えるエピソードですね。

ちなみに1972年に公開された「ボギー!俺も男だ」で共演を果たして以来、お二人は公私共にパートナーであったそうですので、この映画の撮影時にもその関係は続いていたと思われます。

それでは作品情報をどうぞ。

 

 

作品情報

うだつの上がらないスタンダップ・コメディアン、アルビーは、知り合った美女アニーと意気投合して同棲生活を始めるが、うまくいくのは最初だけ。次第に相手のイヤなところが気になり出した二人の間には見えない溝ができ上がっていた。そしてアニーの前に現れた人気歌手のカリフォルニアへの誘いが二人の仲にピリオドを打つ決定的なものとなった…

アニー・ホール [ ダイアン・キートン ]
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出演■ウディ・アレン

ダイアン・キートン

トニー・ロバーツ

クリストファー・ウォーケン

キャロル・ケイン

ポール・サイモン

監督■ウディ・アレン

脚本■ウディ・アレン

マーシャル・ブリックマン

1977年4月20日公開(アメリカ)

 

 

感想・レビュー

いやぁ良かったです。ひとりの女性との出会いと別れを描いたストーリーの中に、映画として実験的な要素を多く盛り込みつつも、楽しく温かな作品にまとまっています。ふたりの内心を上手く表現した脚本もすばらしく、まるで親友の話を親身になって聞いているような、そんな気分にさせてくれる映画です。

アルビーのこと

ウディ・アレン演じるアルビーは、自分の好きなものへのこだわりが強く、それ以外のものには興味がなくむしろバカにしているのですが、打たれ弱い部分もあり、神経質でデリケートなハートの持ち主なんですね。それには自分がユダヤ人であることが関係していて、どうしてもそうでない人との間に線引きをしてしまうような部分があります。また、非常にあまのじゃくな性格で、ひとり目の妻であるアリスンは、「美人で好きモノでインテリで」悪いところがひとつもなかったのですが、「自分を会員にするようなクラブには入りたくない」と別れてしまったんですね。アルビーやアニーの「過去の恋愛」についての話は全て回想シーンで登場しますが、それはアニー・ホールと出会い、語り合った中での回想という形で映像化されます。つまり、今まで生きてきた人生について、全てを語り合えるほど気の合う女性と出会ったわけです。

アニー・ホールのこと

一方ダイアン・キートン演じるアニー・ホールは、一般的なアメリカの家庭で育ったいわゆる育ちの良い娘で、明るく天真爛漫で自由で、そしてやさしい女性なんですね。ただ少しばかり自由すぎて、部屋がめちゃくちゃ散らかっていたり、約束の時間に遅れてきたりと、神経質なアルビーと合わない部分もあるのですが、素直で無邪気な彼女をアルビーはすぐに大好きになってしまいます。アニーの最初の登場シーンが、ふたりの関係がうまくいかなくなり出してからのシーンですので、少しわかりづらいかも知れませんが、出会いのシーンに戻り良い関係が出来上がっていくシーンでは、アルビーがいかにアニーを愛しているかがひしひしと伝わってくると思います。とにかくこの「アニー・ホール」というひとりの女性の魅力がこの映画の見どころでもあり、観る側もアルビーと同じ目線で彼女に振り回され、それでも放っておけず、気づけば彼女のとりこになってしまうのです。それは半分はアニーを演じるダイアン・キートンの魅力そのままだと思うんですよね。すごく美人というわけではないのですが、何ともチャーミングな女優さんです。

様々なしかけ

アニーの登場シーンのように、話が前後するシーンが多くあったり、回想シーンに現在のアルビーやアニーが入り込んでしまったりと、様々なしかけがあるのもこの映画の特徴かと思います。他にも突然カメラの向こうの観客に話しかけたり、通行人と並んで歩き出し、ふたりがうまくいかない理由を尋ねたりと、斬新でおもしろいシーンがたくさんありますが、全体を通しては不思議とうまくまとまっているところもこの映画のすごさだと思います。ストーリー自体はシンプルなんですが、多くのエピソードを盛り込ませることによって、この映画が非常に楽しく厚みのある映画になっているのではないかと思います。ただ、会話は常に早口で台詞も非常に長いので、ちょっと他所を向いていると話がわからなくなっているということがあるかも知れません。

ラストシーン

一度は壊れかけた関係を修復し、今度こそうまくやっていこうとお互い努力をするのですが、その時点でふたりの関係はすでに終わっているのですね。お互いがその事に気づき、円満に別れて友だちになるのですが、アルビーはすぐに後悔しアニーを連れ戻しにカリフォルニアまでいくわけです。そこではアニーが思いのほか楽しくやっていて、ニューヨークには帰らないときっぱり言われてしまいます。観ていて何となく残念な気持ちにはなりますが、個人的にはここでアニーが戻らないところが、このストーリーのいいところだと思うのです。どんなに多く語り合い、お互いを知り尽くしたかけがえのない人であっても、一緒にはいられない人っていうのが、この世には存在するんですよね。残念ながら。アルビーとアニーはまさにその典型と言ってもいいのではないでしょうか。その後、ふたりの恋をアルビーが書くのですが、ラストを変えることによって、ふたりはあれで良かったんだと感じさせてくれるように思いました。

 

 

 ひとりごと

久しぶりに観ましたが、いいですねぇ「アニー・ホール」。年に一回くらいは観たいです。ふたりの関係がうまくいかない原因としていちばん大きいのが性生活の問題っていうのも、何だかリアルで頷ける部分も多いと思います。

それにしても、ダイアン・キートンが素晴らしいですね。なんてチャーミングなんでしょう。マニッシュなファッションはもちろん、黒柳徹子的アップヘアも素敵でした。主人公のアルビーはコメディアンですので、アメリカ人ならではのアメリカン・ジョークも多く盛り込まれておりますが、そこはわからなくても仕方ありません。それから、豪華な友情出演も多くあるようですが、本当にちらっとしか出ませんので、わかった方は一時停止してご確認下さい。個人的にはトルーマン・カポーティそっくりの人が、実は本人というのがいちばん驚きました。

それではまた。

おやすみなさい。

 

 

 

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