兄貴の恋人
こんばんは。
今夜は「兄貴の恋人」(1968)を観たいと思います。
この映画は、黒澤明監督の全盛期に助監督を務めた、森谷司郎監督初期の作品になります。
森谷監督は、多くの作品を残し、70年代には「日本沈没」(1973)や「八甲田山」(1977)などが記録的な大ヒットを収めたそうですが、私は残念ながらどちらも観た事がないんです。
森本作品で唯一観たのが、「兄貴の恋人」と同じく、加山雄三主演の「弾痕」(1969)なんですが、これはすごく良かったです。「弾痕」もまた観たいですね。
なぜこの「兄貴の恋人」を今まで見逃していたのかはわかりませんが、初めて観る作品ですのでとても楽しみです。
では作品情報をどうぞ。
作品情報
女子大生の節子は、商社マンの兄・鉄平のモテモテぶりにいつもやきもきしていた。
当の鉄平は清楚なOL和子と金持ちでグラマーな緑を両天秤。緑の存在を知らなかった節子は、プールでふたりのデートの現場をみつけ、オカンムリ。そんな時、鉄平に海外転勤の話が持ち上がり…。
出演■加山雄三
内藤洋子
酒井和歌子
白川由美
監督■森谷司郎
脚本■井手俊郎
音楽■佐藤勝
1968年9月7日公開
感想・レビュー
良かったですねぇ。1968年の東京の風景も多く映し出されていますし、わかりやすくて楽しい映画でした。好きなタイプの映画です。ただ、後半ちょっと間延びしている感があったのと、酒井和歌子演じる和子が控えめすぎてすっきりしない部分があったのがチト残念だったかなぁ。
加山雄三の存在感
久しぶりに加山雄三さんの出演作を観ましたが、やはりいいですね。この方の存在感ときたらもう、右に出るものはいないと思いますね。
どことなくむさ苦しい雰囲気もありつつ何故かさわやかで、どんくさそうかと思いきやシュッとしていて、田舎くさいようで都会的で、何よりこの、まっすぐで正直そうな雰囲気が時代と完全にマッチしていますよね。しっかりとした顔立ちも、非常にフォトジェニックで、モノクロで良し、カラーで良しと悪いところがありません。この方を撮るのは、思い通りの写真や映像が撮れそうで、製作側は楽しいのではないかと思いますね。
1960年代後期の東京
この映画には1960年代後半の東京の様子が映し出されているところも、見どころのひとつかと思います。はじまりのシーンが、加山雄三演じる鉄平が家族で暮らす家での朝の風景なんですが、二階建ての家には子どもたちそれぞれに部屋があり、鳥かごにはオウムがいて、まぁまぁ裕福な家庭の様子が伺えます。阿佐ヶ谷駅から中央線に乗って新宿へ出るシーンや、鉄平の勤め先である銀座、行きつけのバーのある新宿の街並みが登場するシーンもあります。また、酒井和歌子演じる和子が働く川崎のスナックのシーンでは、工業が盛んな川崎の雰囲気をわかりやすく描いていて、1960年代後半の東京の様子が感じられるシーンが数多くありますので、その辺りにも注目していただけるとおもしろいと思います。
まわりを固める名脇役
まず、鉄平の同僚の妻で妊婦の役どころで、樹木希林。この方は若い頃から今現在でもお変わりなく、コミカルな演技が楽しいですね。それから鉄平の両親を演じるのが、宮口精二に沢村貞子なんです。ちょっとした青春ものには豪華すぎますが、やはり良い味出してますよね。
バーのママの白川由美の美しさや、ピアノの先生役のロミ山田にも注目ですね。
若き女優たち
鉄平の妹節子を演じる内藤洋子さんもまた素晴らしいですね。上品且つ気の強そうな雰囲気と、目力がいいですよね。酒井和歌子さんは、天使のようにかわいらしくて素敵ですし、節子の友だち久美を演じる岡田可愛という女優さんも、ショートカットでおきゃんな感じがキュートです。久美がブローチをもらうシーンが好きでした。緑役の中山麻理さんも美人です。そしてやはり、この時代のファッションがも見逃せません。若くてきれいな女優さんたちが着るワンピース姿や、きれいにセットしたヘアースタイルは、60年代好きにはたまらないです。
ひとりごと
ほとんどストーリーについて触れていませんでしたが、簡単にまとめますと兄貴が大好きな妹が、兄離れして大人になっていくというお話です。大抵の場合は、彼氏ができて世話を焼く対象が変わると、兄貴なんてどうでもよくなってしまうものだと思うのですが、女の子は生まれながらに男の世話を焼く生き物なんだなと、つくづく思いましたね。やれやれです。
後半兄貴に本当に好きな人ができてからは、節子はピアノに打ち込み、ピアノの先生と車で出かけていくシーンがあるのですが、このシーンいまいち意味がわからなかったです。あとで予告編を見たら、大人への扉を開いた、という感じのクレジットがありましたが…?
そして、ラストシーンまですっきりしない和子が、観ていてもどかしくもありましたが、全体的にはさわやかで楽しい作品でした。
それではまた。
おやすみなさい。